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閑村の伝統
【その他 官能小説】

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閑村の伝統-1

私は今でこそ大都市に家を持っているが、元は田舎の出だ。
それが、色んな意味でとんでもない田舎で…
私の村はA県の外れにある山間にある。
周りは木々に囲まれ、かろうじて電気は通っていたが、家はどこも全て木造。先進国となった今ではかなり珍しい光景の村であろう。
高地なので環境の変化も激しく、日々の生活が大変であった。
更に悪いことに、土壌が悪いのか、あまり作物が育つことがなかった。
農村としては最悪の立地条件といえるだろう。
だが、そんな環境においても、不思議と生活が苦しくなることはなかった。
別に私の家が裕福であったとか、そういう訳ではない。
子供の頃はそんな矛盾に何の疑問も持たなかったが、年頃になって、この村の秘密を知ることになる。


この村では半年に一度、「姫巫女祭」という祭りがあった。
村の中から選りすぐった美女を揃えて、豊穣を祈るという祭り。
どこか閉鎖的な空気をもつこの村が、唯一外部に対して開く祭りでもある。
こんな廃れた村に人など来るものか、と思うが、来るのである。
数える程の人数だが、どの年も人が全く来ないときはなかった。
私が17歳……高校2年生のときに、5人程『姫巫女』に選ばれていて、その中によく知った顔もいた。
誰かというと、私の通う学校の教師にしてクラス担任、水城陽子(みずきようこ)。24歳。
目鼻立ちはキリッとしていて、クールな印象を受けるが、性格は正反対に柔和なものだった。
身体つきも、胸の膨らみ、腰の括れ、引き締まったヒップは全てが完璧で官能的で、教師よりグラビアアイドルの方がよっぽど似合うと幾度となく思ったものだ。
ちなみに彼女はその優れた容姿のため、以前から何度か姫巫女に選ばれているらしい。
いずれにしても、皆厳密に選出されただけあって、かなりの美人揃いだった。

そして私はというと、『守人』(もりびと)という仕事に就くことになった。
どういう選抜方法で私が選ばれたのかは分からない。
この仕事は深夜の業務で、1人しか就かない。
危険と判断した行為はすぐやめさせるように、などその時は訳の分からない説明を受けた覚えがある。
警備員のようなものなのかとその時は思った。あながち間違いではなかったが。
仕事の場所はというと、神社の奥にある『神域』と呼ばれる建物内である。
そこは完全立ち入り禁止区域で、唯一の例外が、村長と姫巫女祭のときに選ばれる巫女だけと聞いている。
そんな所に向かうということで、さすがに私も緊張した。

姫巫女祭の宴も終わり、私は村長の案内を受けて、未知の場所へと歩いていった。
やがて本堂の前まで来ると、村長がここから先へは1人で行けと言ってきた。
それから、客人に決して粗相をするなと。
何も知らない私は、その言葉の意味が分からなかった。
神域の中では、姫巫女達が豊穣の舞いを夜が明けるまで行う。
それが姫巫女祭での通説だ。
そして、そこに巫女以外の人間。ましてや客人などがいるはずない。
腑に落ちないまま、私は言われた通りそこから1人で進んでいった。
本堂を抜けて、そのまま神域へ…
すぐ裏手にあるのかと思えば、それらしきものは全く見当たらない。
村長に事前に言われた通り、あるかないかの獣道をひたすら歩く。
やがて、開けた場所にたどり着く。
そこには一軒の平屋があった。
村でも普通に見かける、何の変哲もない建物。
これが『神域』だとでもいうのか…あまりに信じられなかった。
とにかく、平屋の方へと近づいてみる。
中から人の声が聞こえる。とすれば、間違いないのだろう。
私はその扉をそっと開いた。


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