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閑村の伝統
【その他 官能小説】

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閑村の伝統〜恋人〜-2

「もう帰っちまったけど、みどりも麗子や宗太に会いたがってたからさ。また帰ってきたときには会ってやってくれよ。それより、宗太。昨日は村の祭りで仕事任されて夜遅かったんだろ?よく寝坊しなかったな」
「あ、ああ…香苗さんが起こしてくれたから」
充の何気ない一言でも、言葉の節にあの祭りが絡めば動揺してしまう。
「ああ、慎太さんの奥さんか。いいよなあ。あんな美人と一緒に住めるなんて」
「はは…兄貴付きだけどな」
「それでもいいじゃんか!変わってほしいくらいだぜ」
「…みどりちゃんに言いつけるわよ」
冷たい声で、麗子が話に割って入る。
それは充に対して絶大な効果を発揮する、魔法の言葉だ。
「じ、冗談だよ!だ、だから、あいつにだけは…!」
そして、さっそく効果を発揮したのか、とたんに顔が青ざめブルブルと身体を震えさせる。
その充の様子をチラリと見た後、宗太に向き合う麗子。
「ねえ宗太。昨日宗太の村であった祭り…姫巫女祭だっけ?あれって外部の人間をほとんど招かない祭だったわよね?」
「そうだよ」
実態はともかく、表向きには昔からその風習は変わっていない。そのため、充と麗子も今まで一度たりとも姫巫女祭に来たことはなかった。
宗太の返事を聞いて、麗子は何か考え込みはじめた。
「どうした?」
「うん…見間違いかもしれないけど、昨日の夜に水城先生が村の方に行ってたのが見えたから…それで不思議に思って」

ドクン…!

麗子の言葉に、宗太は本日最大の心臓の爆発音を聞いた。
水城陽子。
宗太達のクラス担任で、美人で優しいことで評判な先生だ。
そして……
「…ああ、俺も後で聞いた話なんだけど、水城先生はうちの村の出身らしいよ。だから祭りにも来れたみたい」
暴れまわる鼓動を押さえつけ、宗太は平静を装い言った。
そのことは嘘ではない。確かに彼女は村の出身者だ。
だが、祭りにいって陽子が何をしていたか、自分と何をしたのかは口が裂けても言えることではない。
「そうなんだ。先生がこっちの出身なんて知らなかったな」
麗子はようやく納得顔で頷く。

…と同時に、H.Rを告げるチャイムがタイミングよく校舎に響いた。
まだ麗子は話たかったようだが、充と共に渋々と自分の席に座る。
やがて生徒が全員着席してから少し遅れて、1人の女性が教室に入ってきた。
カツ、カツ、とヒールの音を小気味よく立てながら、このクラスの担任、水城陽子が教壇に立つ。
非常に整った顔なのだが、どことなく冷たい、クールな印象を受ける顔立ちだ。
だが、一度話せばそのイメージは完全に覆る。
「みんなお早う。さっそくH.Rを始めるね」
教室を見回した後、笑顔で自分の生徒達に話しかける陽子。
このように、クールに見えるのは正に第一印象だけで、本来の陽子は表情のコロコロ変わる物腰の柔らかな優しい女性なのだ。
それに加えて、滅多にお目にかかれない程の美貌とスタイルから、公式、非公式共に、多くのファンクラブが存在している。
果ては一部の教員までファンクラブの会員になっているという噂もあるが、それを完全に否定できない程の美を陽子は備えている。
宗太は彼女が教室に入ってきてから、心臓が早鐘を打ちっぱなしだった。
以前から憧れの先生ではあったのだが、姫巫女祭で秘密の関係を持ってから、胸の高鳴りは更に大きくなっている。
(先生…先生はあの日のこと、どう思ってるんだろう…)
自分とあんなことをしてから、今こうして近くにいる状況で、宗太は、陽子が自分を見る目に何か変化があるかもしれないことを期待していた。
そんなことを思っていると、陽子とバッチリ目が合ってしまった。
一瞬ドキリとする宗太。
だが、陽子はすぐに視線を逸らせて、何事もなかったかのようにH.Rを続ける。


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