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ヴァンパイアプリンス
【ファンタジー 官能小説】

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ヴァンパイアプリンス6-1

気付くと、月下は長い長い一本道に立っていた。
「ココ…どこ?」
何故自分がココにいるのか、いつココに来たのか…。月下にもわからない。
「…うぇ!?なッ何で?!」
急に身体が揺れ、月下はびっくりした。何事かと思い、つい構えを取る。
(武道なんて心得てないけど…)
月下が状況を飲み込むより前に、月下の足が動き出した。
「ど…こ行くんだぁ?!わたしの足!!」
『…』
自分の足が答える筈もなく、月下の虚しい質問だけが、異様な空間に消えていった。
月下は行き先を足に任せて、目を周りの景色に移した。
「…あ。」
月下は気が付いた。自分が何処にいるかを。
「何か見覚えあると思ったら…」
月下は元気よくポンッと手を叩く。
「宏樹のお婆ちゃん家に行く道じゃん!!」
そう。今、月下が辿る道は宏樹のお婆ちゃんの家に行く道。
「でも…何であたしココにいるんだろ-?」
月下の疑問などどこ吹く風。足はずんずん進んで行く。
「およッ?」
ちょうど家の前に差し掛かった時、月下の前に黄色のボールが転がってきた。
「ボール…?」
月下はボールを拾い上げる。
―たったったッ
「およ?」
軽やかな足音と共に、小さな男の子が現れた。
「可愛-い!!」
漆黒でさらさらの髪に、髪と同じ色でくりくりの瞳。その男の子はじっと月下を見ていた。
「あ…コレ僕の?」
月下がボールを指差すと、男の子はコクンッと頷く。
「はいッど-ぞ。」
「ありがと」
月下はそのボールを男の子に渡した。
「イイ子だぞ!!いっぱい遊びな!!」
月下は男の子の頭をわしゃわしゃ撫でる。
「…お姉ちゃん、お母さんと同じ匂いがする…」
「ほぇ?」
次の瞬間、月下が気付くと男の子は月下の首に手を回していた。
「ちょっ…」
月下は気付いた。首筋にあたるのが、手だけではない事を。
(牙?!ッてこの子…もしかして…)
「宏樹…?」
「え?お姉ちゃん…僕の事、知ってるの??」その男の子はビックリした顔をした。
その顔を見て、月下もビックリした。笑
(何だ?!この、キラキラ笑顔はぁ!!)
宏樹を呼ぶ女性の声がしたかと思うと、宏樹が出てきた所から女の人が走ってきた。
「あ!!いた!!も〜、何処までボール拾いに行ったのかと思ったわよ!!」
(綺麗な人…)
月下はその女性が綺麗で、つい見とれてしまった。
(そっか!!宏樹はお母さん似なんだ!!…お母さん?若ッ!!)
「あら-?宏樹、この方はどなたかしら?」
ミニ宏樹は未だ、月下の首に手を回している。
「お姉ちゃん。」
「うん。お母さんもわかるわ。」
真面目な顔でこの会話だ。笑
「お母さんと同じ匂いがするの。」
ぎゅっと宏樹は絡ませる手を強くした。
「…あの、お嬢さん?ちょっと失礼ッ」
「え…??」
母は月下の首筋を見る。
「あら--!!…宏樹に何かされました?」
母は申し訳なさそうに尋ねた。
「あ…いえ。大丈夫です。」
(この子は未遂よね)
月下は心の中で思った。
「でも…」
「あ…」
(穴見たのかな?)
「あ、いえ。この穴はこの子がつけたんじゃないんで、心配しないでください。」
(これはでっかい宏樹のだしね。あ、でも宏樹か…)
「あなた…」
母はビックリした顔をした。
「ははッ」
月下は吹き出した。
「え?何で笑うの?」
母は不思議そうな顔をする。
「ごめんなさいッ。驚いた顔があまりにも宏樹にそっくりでッ」
「…そう。」
母は穏やかな顔で微笑んだ。
「お嬢さんのお名前、聞いてもいい?」
「はい。峰島月下です。」
「月下さんね…。お茶でもいかが?」
「いえ…でも…」
「宏樹もなついてるし…ね?は-い。一名様ご案内〜♪」
「な〜い♪」
「え〜?!」
母は月下の手を引き、半ば強制的に連れていかれた。


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