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ヴァンパイアプリンス
【ファンタジー 官能小説】

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ヴァンパイアプリンス-1

真夜中…漆黒の闇に対照的な月が、怪しく光りを放つ。満月の光に魅了された狼が、一心不乱に吠え続ける。
人通りの少ない路地に、怪しい人影。背格好からして、男性だろう。彼は闇に似た漆黒のマントを身にまとっていた。
彼の視線の先には、若くて綺麗な女性がいた。彼女は人通りの少ない事を気にしながら、足早に通り過ぎようとした。
―その時
彼女の前にはいつの間に、先程の男がマントをなびかせながら立っていた。
「こんばんは、美しいお嬢さん♪…あなたの生き血を…いただきに参りました…ニヤリ」

「ギャーーーーー−−−−−!!!怖いよーーーーー!!」
「月下…イッ痛いから!!」月下は、隣に座っていた結に力一杯しがみ付いていた。
「はははッ。峰島は本当に恐がりだなッ!!」
「だッて…吸血鬼怖いもん…」

今は放課後。みんなで夏休みスタート記念に、怖い話をしようと集まったのだ。月下はもちろん拒否したが、親友の結が残るというので仕方なく残った。

「大丈夫だよ、月下。吸血鬼なんていないしねッ!原田!」
「おッおう!」
原田と結が、今にも泣きそうな月下をなだめる。
「…ふッ…」
二人のサポートも虚しく、月下の瞳からはポロポロと涙がこぼれた。
「…峰島サン、大丈夫?これ、使って…」
「…水無月くん…」
「涙…拭いて?」
月下に差し出された物は、ハンカチだった。
「あ…ありがとッ…」
「峰島サン、吸血鬼…信じてるの?」
水無月は笑顔で月下に尋ねた。
「…うん。信じてる。」
ハンカチで涙を拭いた月下は、水無月の質問に真面目に答えた。
「幽霊とかは信じないけど、吸血鬼は絶対いる…と思うッ。絶対!!」
「何言ってんのよ、月下!!さ、帰るよ!」
水無月と月下の会話に割り込むように、結が入ってきた。
「水無月、帰ろうぜッ」
「あ、うんッ」
原田が出口で、水無月を呼んだ。
「じゃあね、峰島サン。」
「あ、ハンカチありがと!!明日返すから!!」
「クスッ…峰島サン。明日カラ夏休みだょ?」
「あッ…そうか」
「…あげるょ。ハンカチ」
水無月は月下に微笑んだ。
「迷惑だったら…捨ててもイイからねッ」
「でもッ…」
原田が水無月に催促しにきた。
「バイバイ。峰島サン…ぁ」
水無月は何かを思い出したようで、教室を出ようとした足を止めた。
「僕も…吸血鬼いると思うよ」
そう言い残し、水無月は去っていった。

「な〜…んだッ。水無月クンは、月下狙いかッ」
結が水無月のハンカチを摘み上げながらそう言った。
「水無月クン、狙っている子いっぱいいるよッ。スゴぃじゃん…月下…」
月下は、結が水無月をスキな事を知っていた。
「ううん…。水無月クンはみんなに優しいじゃん。あたし…やっぱりコレ返すょ。」
「…そう…」 
そして結と月下も教室を後にした。

「ヤバぃ…非常にヤバぃょぉッ…」
月下は泣きそうだった。結と学校を出た後、二人でケーキバイキングに行って、気付いたら夜になっていたのだ。
「大丈夫?ココから一人で帰れる?」
駅から結と歩いてきた月下だが、とうとう結の家に着いてしまった。
「うんッ…ダッシュで帰れば8分で着く…カラ…」
「そぉ?ゴメンね。じゃぁまた…」
「うんッバイバイ。」
運悪く、今日は満月だった。
「…怖いょぉ…ひ〜ん」月下は全力で地面を蹴った。
ガサガサッ
「キャッーー…ってキミか…」
月下の足元には黒い猫がいた。スリスリと体を擦り付ける。
「なんだ〜?キミも一人で怖いのかな?」
月下が猫を抱き抱えようとした時…突然の突風に襲われた。
「キャッ!!」
風に驚いた猫は月下をおいて、逃げてしまった。
月下がゆっくりと目を開けると、そこには漆黒のマントをまとった青年が立っていた。
「…ッ。」
月下はただ青年を見つめていた。
青年も月下を見つめ、薄笑いを浮かべたと思うと、次の瞬間。月下の前から姿を消した。
「…血だ…」
青年が立っていた場所には2・3滴の血液が滴れていた。
「…吸血鬼…だ…」
月下は見た…。微笑んだ青年に、鋭い歯が光っていた事を。
「真夜中…血痕…漆黒のマント…鋭い歯…。吸血鬼…だ…。」
月下は呆然と立ちすくんでいた。


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