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ヴァンパイアプリンス
【ファンタジー 官能小説】

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ヴァンパイアプリンス6-2

「はい。ここに座ってねッ」
「はい…。」
月下は見覚えのある客間に通された。
「お茶持ってくるからちょっと待っててね。」
「あ…おかまいなく。」
母はにこっと笑って、部屋から出ていった。
「…。」
(変わってない…)
月下は以前来たことのある部屋を、もう一度見回した。
「あ…この時計…ちゃんと動いてる-!!」
前に来た時は時間が狂っていた時計も、今は現役だ。
「あたし…本当に過去に来ちゃったんだ…」
「お姉ちゃん…」
月下が振り返ると、ミニ宏樹が障子の外から少しだけ顔を出していた。
「な-に?宏樹くん」
月下はおいで-と両手を広げる。たたた-ッとミニ宏樹は月下の腕の中にすっぽり入った。
「何でお姉ちゃんはさぁ、僕の事知ってたのぉ?」
「ん-?」
月下は宏樹を膝の上に乗せた。
「それはね〜、お姉ちゃんは宏樹くんの未来のお嫁さんだからだよ♪」
「お嫁さん-?」
「うん♪ほら…この指輪ね、未来の宏樹くんから貰ったんだ♪」
「わぁ〜…」
ミニ宏樹は目を輝かせて指輪を見ている。
「これ…僕がお姉ちゃんにあげたの?」
「うん♪」
「お嫁さん…」
ふふッと宏樹は笑った。
「宏樹くんはね、凄く優しくて頼りになってね、と-ッてもカッコイイんだぁ♪」
「そ-なの?僕、カッコよくなるの?」
「宏樹くんは今も十分カッコイイぞ-?」
「…//」
ミニ宏樹は恥ずかしそうにうつ向いた。
「僕…お姉ちゃんの事好きだよ?」
膝の上の宏樹は本当にかわいくて、月下は思わずぎゅ-ッと抱きしめた。
「お姉ちゃんも、宏樹くんの事大-好きだよ♪」
腕の中の小さな体に、月下は未来の宏樹の姿を重ねる。
「…宏樹が思う以上に私、宏樹の事が好きだよ…」
この小さい背中が、今、月下の一番大事な人。そう思うと、何だかとても愛しく思えた。
『月下…』
宏樹が月下の名を呼んで、月下に笑顔を見せる。
「好きだよ…」
月下は目を閉じて、瞼の裏に今の宏樹を思い浮かべた。
(その顔で、その声で、わたしを呼んで…)
―ガラッ
「おまたせ-♪…あら?宏樹…寝てるわ。きっと貴方が来て、興奮して疲れちゃったのねぇ。」
クスクス笑い、母はお盆を机上に置く。
「え?あ。」
「ごめんなさいね。重かったでしょう」
そして、月下の膝の上から宏樹を抱きかかえる。
「よいしょっと…。宏樹が知らない人になつくなんて初めてだから…正直ビックリしたわ。」
母は畳の上に座布団を置き、宏樹を寝かせた。
「でも…あなた、宏樹のお嫁さんなのね。」
月下の前に麦茶が置かれる。
「え//あ…はい//」
「ごめんなさい…盗み聞きしちゃったの。」
母は少し照れ臭そうに言った。
「どう?成長した宏樹は。ちゃんとイイ子に育ってるかしら。」
母は寝息を立てる宏樹に目を落とす。
「はい。凄くイイ人です。優しくて…頼れて…。」
「そう…。」
月下は麦茶をすする。(味…同じだぁ-!!)
懐かしい味が口内を流れる。
「宏樹は…あなたの時代の宏樹は、ちゃんと幸せなのかしら?」
母の真っ直ぐな目が月下を捕える。
「…はい。ッて私が答えるのも何ですけどね。」
月下はきちんと母の前に座り直す。
「宏樹は宏樹なりに、一生懸命自分を受け入れようって…頑張ってます。謙虚になりすぎる所があるんですけどね〜。」
にへら〜ッと月下は笑った。
「私は宏樹自身が好きです。吸血鬼だから…とか関係なしに、水無月宏樹ッていう人間が好きなんです。だから…宏樹の事、近くで支えてあげたいんです。」
「…あなたなら、大丈夫ね…。有難う。宏樹の事、好きになってくれて…。宏樹の事、受け入れてくれて…」
「お礼を言うのはこっちです!!」
母はクスクスと笑う。
「…あなたとはいずれ会うことになるわね。私は水無月紗映子よ。宏樹の事、宜しくね…」
差し出された右手に、月下も手を出した。
「はい…」
―ガラッ
「たっだいま〜!!父が帰ったぞぉ!!」
その時、月下は宏樹によく似た青年を見た気がした。
(あれ…視界が白く…)
―…


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