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クリスマスに願うこと
【幼馴染 官能小説】

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クリスマスに願うこと-6

「ここでさ…」
英津子が懐かしむ様にベンチを指差した。
「初めてキスしたんだ。あたし」
赤い木のベンチ。雪が降り積もったまま静かに佇んでいた。
「…そういや、ここでキスするとずっと一緒にいれるって言うジンクス、あったよな」
言うと、英津子は懐かしむ様に笑って頷いた。
「あ、自販機、ちゃんと120円になってる」
助手席側の窓にひたいをくっつける英津子。息によって真っ白くガラスが曇る。
「ほら、見て。まだナタデココジュース置いてあるよ」
英津子が俺のダウンジャケットを引っ張る。仕方無いから身を乗り出して助手席のシートに手をつき、英津子の頭の横から窓を覗き込んだ。
「本当だ。ミルクセーキもちゃんと残ってる」
俺が言うと英津子が笑った。俺もつられて笑ってしまう。
共通の思い出が俺達をいっそう強く結び付ける。泣いた事、笑った事、怒った事、全部、全部……


「歳くったな」
「…そうだね」
鼻先で香るシャンプーの匂い。コツンとひたいを押し付けると、英津子が俺を見上げた。
「…よっちゃん」
唇が近付く。
解らないほどウブじゃない。
これは「キス」なんだって。

………っ……

一秒、二秒、瞼を閉じてキスする、英津子の表情を盗み見する。初めてみる女の顔に、胸の辺りがチクリと痛んだ。
「……っちゃん?」
目を開けると唇を離した英津子が小首を傾げていた。
キス、っても唇を重ねただけだったが。触れた英津子の唇は紅く、メントールのリップクリームの味がした。
「……っちゃ」
言いかける英津子の唇を、今度は俺から塞いだ。
なんでだろう。
英津子とのキスなんて絶対有り得ないと思っていたのに。
こんなにも懐かしくて愛しい。
もっとキスしたい、正直に言えばそうだ。
でもどうなんだ?これで良いのか?俺達は…………

…ちゅ…っぷ……っ

俺の唇と英津子の唇が重なって、交わって、互い違いになって、角度を変える度に甘い水音が車内に響いた。
舌先を追い掛け、甘噛みし、歯列をなぞり、舌を啜っては唾液を味わう。癖になりそうなキスに俺は夢中になった。
英津子の口内は甘ったるい。先程まで口にしていたミルクチョコレートの味がする。甘い物が余り得意じゃない俺だが、何故だか今だけはもっと味わいたい。
舌先を絡めると、英津子がくぐもった声を漏らす。指先が俺のジャケットを掴み、微かに震える。
っぷ…と音を立てて離れると、とろんとした表情の英津子。
「よっちゃんの……セッターの味がする」
ほうけた顔をして。可愛い、なんてちょっと…ほんのちょっと思った。
「俺はセッター愛用者ですから」
口元の唾液を親指で拭ってやると、
「んぅ…」
なんて甘い声で鳴きやがる。
………ったくコイツは…
「セッター、苦い」
セッターとは俺の吸っている煙草の銘柄、セブンスターの呼び名だ。確かに吸わない奴にとっちゃ苦いかも知れないが。
「……じゃあ、やめる?」
助手席のシートに置いた片腕に体重をかけ、覆い被さる様に英津子の顔を見つめる。
……本当言うと、今「よっちゃん!!」なんて、いつもの様に怒られたら止めるつもりだった。
だって俺達は兄弟みたいな関係だし、好きか?なんて聞かれたってイマイチはっきり言えやしない。
キスしちまったけど、弾みだ、って言えばそれまでの話だし。元はと言えば英津子からだし。
だから、いつもの様に怒る事を7割、反対に泣く事を2割。そう予測していた。

なのにコイツは……

残りの1割、俺と関係を結ぶ、っていう選択をしやがったんだ。


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