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クリスマスに願うこと
【幼馴染 官能小説】

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クリスマスに願うこと-1

「小豆味のアイスが食べたい」

空は今にも泣きそうで、雲が重たく重なっていた。風は北東の方角から、雪を混じらせながら耳が切れてしまうのでは無いかと思うくらい暴力的に吹き荒む。
…普通に寒い。いや、寒いなんて生易しい。痛い。痛いくらいのキツいのだ。

「だーかーらー、小豆味のアイスだって」

…あぁ、鼻も痛い。鼻ン中、血ぃ出そう。
「よっちゃん、聞いてる!?」
「聞いて無い」
「◯村屋じゃなきゃ駄目よ。他のメーカーだったら何度だって買い直しに行かせるからね」
…人が「聞いて無い」まで言ってんのに、べらべらべらべら喋りやがって。◯村屋だろうが何だろうが、思う存分独りでやってくれ。
と、思ったが乾燥した唇が痛かったのと、これ以上体内に冷気を送り込むのだけは勘弁して欲しいので、俺は無視する事に決めた。



冬、真っ盛り。
今年の初雪は11月初旬だった。そんな豪雪地帯に住まう俺達は、暖冬だと言われたって、いまいちピンとこない。冬に雪が降らない事は無いし、寒さが感じない日は無いからだ。
産まれてこの方、ここ以外で暮らした事が無いので特にそう思うのかも知れないけど。
そんな、今日も雪が降りそうな天気だが、俺はスコップを片手に雪下ろしをしていた。
二階(一番下が車庫なので三階と言った方が正しいが)のベランダから梯子を掛けて屋根に登り、昨夜のうちに降り積もった雪を排除する作業を繰り返している。新雪はまだ固まっておらず、スコップが刺さりやすいからまだ楽だ。
ばさ、ぼさっ…と重たい音と共に庭に落ちる。庭も道路も勿論積雪している。何日も溶けたり降ったりを繰り返しているので、除雪は諦めに近い。

「よっちゃん、小豆味の…」
「うるさい、勝手に買って来いッ!!!」
何度目だか数えるのもウンザリだ。俺はジーパンのケツポケットからぺしゃんこの財布を引っ張り出し、さっきから腹が立つほど喧しい「そいつ」に向かってぶん投げた。
「サンキュー!じゃあ、よっちゃんには怪しいアイス買ってきてあげるね!」
……俺は金まで出してそういう扱いなのか、このアマは。
俺は、ベランダから上を見上げる「そいつ」に悪態を吐く。でも、やっぱり寒いから心の中で、だけど。
「よっちゃん、よっちゃん」
軍資金を調達したから、ホクホク顔でそいつは言った。
「ありがとねッ。よっちゃん大好き!」
紅いほっぺたが寒さのせいか判別出来ないが、照れた様に言ってそいつは部屋に入ってしまった。
……弱いんだよなぁ。結局。
俺はニット帽の中で耳まで真っ赤にして、ぐっと唇を噛みながら作業を再開したのだった。



俺は義文(よしふみ)通称よっちゃんだ。かなり不服だが、もう慣れてしまった。
奴は英津子(えつこ)通称えっちゃんだ。最近は呼ぶ方が恥ずかしくて、おい、とか、お前、なんかで適当に済ませている。
俺達は近所付き合いの延長で同じ学校に通い、幼馴染みと言うか同い年の兄弟みたいな感じで、割りと社会人となった今でも仲が良い。
「いっそ嫁に貰っちゃいな!!」
と親はけしかけるが、全くもってノーサンキューだ。俺達にはそんな甘っとろい空気は無く、お互いに恋人をもっていたりする。……って一年くらい前に俺は彼女にフラれてしまったが。
つまり、お互いに恋心を抱く「幼馴染みラブ」みたいなケースはまるで無く、本当に兄弟とか悪友みたいな感じなのである。


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