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クリスマスに願うこと
【幼馴染 官能小説】

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クリスマスに願うこと-5

「ありえないっ、本気でスーパーに連れて来る奴いる!?」
片耳が自動的にクローズする。助手席でキャンキャン騒ぐ英津子の声はほとんどカットだ。
一時間前から降り始めた雪は、町のイルミネーションを霞ませながら降り積もる。赤や黄、青や紫なんかがフロントガラス越しに滲んで見えた。
「なんだかんだ言って、結局買い物したくせに」
ぼそりと喋る。そう。コイツは文句たらたら言っていたくせに、着いたらやっぱり中を覗き、お腹が減ったと何だかんだ買って来たのだ。
「だって……お腹減ったんだもん。小豆アイス、よっちゃん家の冷凍室に入れて来ちゃったんだもん」
……また勝手に。と言ったら、はっ倒されるから黙っておこう。
「んじゃ、家に送ればいいんだな」
「やだっ、折角クリスマスなんだよ!」
「だからココに連れて来てやったろ」
「よっちゃん!!!」
如月の駐車場で俺達は同じ話をぐるぐると喋っていた。かれこれ30分は経っている。吹かしっ放しのエンジン。暖房と二酸化炭素で曇るガラス。ガソリンだって馬鹿にならないのに。
「よっちゃん、クリスマスなんだから夜景の綺麗な場所とか調べときなさいよ。ドンねぇ」
……ドンかよ。(鈍感と言う意味)なんで俺が責められなきゃいけないんだ。……このアマが。
「……ここに放り出すぞ」
ジロッと睨むが全く効き目は無い。
「しょうがないなぁ。じゃあ、よっちゃん!」
「なんだよ…」
にんまりとした英津子。こいつは呆れられてるって自覚が無い。コイツだってドンだよな。
「あそこに行こうよ!ね、あそこだったら景色も綺麗だし」
「……あそこねぇ。ったくお前は…」
渋々シフトノブに手を掛ける。
「えへへっ、ありがと。よっちゃん大好きっ」
何だかんだ言って、こう言う一面があるから憎めないんだよなぁ。
なんて。思ったけど口が裂けても言ってやんない。

……図に乗るだけ、だろ。


あそこ、と言うのは俺らがよく通った駄菓子屋の裏、心臓破りの坂を上った先の高台だ。
心臓破りの坂と言うのは大袈裟だが、当時の俺達はいつもチャリンコで、勾配はあまり無いがだらだらと続くこの坂をそう名付けたのだ。
今、この車で上るのはなんて事無い。境界線の無い二車線ほど広い坂道。道沿いに点々と家の明かりが見える。それらを覆う様に黒々とした森林。夜に通るのは不気味だと思っていたが、何故か今日は綺麗だと思った。
クリスマスだからだろうか。雪で化粧を施された木々が、包み込む様に優しげに見える。
高台に辿り着く頃には、俺達は無口になっていた。
景色が綺麗なのと、多分、クリスマスに酔っていたから、だろう。
静まり返ったホワイトクリスマス。高台から見下ろす家々は、息を飲むほど綺麗だった。

「……よっちゃん」
「ん?」
「綺麗だね」
「……ああ」
二人でフロントガラスを見つめた。
高台にバックで駐車し、なだらかな坂の下を眺める。
俺達はこの高台で野球やサッカーなんかで遊んでいた。ベンチと小さな自販機しか置いてない、簡素な空き地のような公園だ。
この高台から住宅街へと、左右に道が拓けているだけだ。滅多に人は通らない、恰好の遊び場だった。


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