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クリスマスに願うこと
【幼馴染 官能小説】

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クリスマスに願うこと-10

息を整えた後、捻くれ物の俺は照れ隠しをするように英津子から離れて愛用のセッターに火を点した。

「よっちゃん…」

衣服を整え、髪を手櫛で直しながら英津子が言う。
一本目を吸い終わる辺りだった。
「よっちゃんはクリスマスにお願い事、ある?」
運転席から首だけを捻り、左後部座席の英津子を見た。
いつもの適当な話題では無い、ちょっと真剣な表情に俺は仕方無く考える。
「……そうだなぁ……お前は何かある?」
携帯用のシルバーの灰皿に煙草を押し付ける。火花が紅くこぼれた後、音も無く消えた。
「いっぱいあるよ」
英津子が俺を見る瞳が、揺れている…………

「マフラーが届きます様に。
手袋が届きます様に。
帽子が届きます様に。
キーケースが届きます様に。
ガスライターが届きます様に。
財布が届きます様に。
そして今年は
携帯用灰皿が届きます様に。ってね」

そう笑って…いや、涙を浮かべながら英津子は持って来た鞄を開いた。
そこには英津子が使う必要のない、プレゼントたち。
今、願ったものが詰め込まれていた。


「全部……全部、よっちゃんに届きます様にって…」

「英津子…」

「やだ……来年、願わなくても済んじゃったじゃない」
英津子は泣き笑いの表情を浮かべる。その、目尻から滑る涙を指ですくった。
「来年は、昔の様に名前で呼んでもらえます様にって…」
「そんなのいつも、ここ……」
言いかけてハッと口をつぐむ。慌てて口を押さえる俺を不思議そうに英津子が見ていた。
「…なんでもねぇよ」
座り直し、煙草を出して一本咥えた。
「何よぉ……」
ダルそうにシートに横たわる英津子。
不貞腐れた、その表情さえ……こんなふうに思うのは、きっと……

きっと



煙草には火を点けず、ケースに戻す。少し萎れたそれがストンと箱に戻った。

…ギシ……

「……よっちゃん?」

後部座席に手をついて

「……なあ」

囁きと共に唇を寄せた。
英津子の耳元に、唇に、俺の願いを込めて。

クリスマスに願う。
プレゼントよりも

英津子が欲しい。
英津子が側に居ればいい。
俺達は二人で一つなんだから。

そんなちょっと素面では言えない、気恥ずかしい言葉をまとめて


「そんなの、いつも心の中で言ってる。英津子は俺の側にいればいいんだよ」



ぶっきらぼうな言い方だけど、英津子が笑って答えてくれる。



「よっちゃん大好きっ」

ってな。





FIN


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