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クリスマスに願うこと
【幼馴染 官能小説】

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クリスマスに願うこと-4

「丸くてふわふわで、つぶらな瞳の…」
「無い」
「そんな、まだ途中…」
「無い」
「よっちゃんっ」
「無いったら無い」
俺は耳を塞ぎ、聞こえませんよ〜、の態度をとった。だが
「いいもんねー。えっちゃん、今度一緒に役場にお散歩に行こうね」
は?と英津子を見ると、その手の中にはかなりヨレヨレの不細工な縫いぐるみが……
「てめ、まだンなもん持ってたのかよっ!?」
「だってよっちゃんの手作り『兎の縫いぐるみ「えっちゃん」』よ。手放すわけが無いじゃない」
ねー、と兎の手をヒラヒラさせる。
「『これママと一緒に作ったの。兎のえっちゃんって言うの』なんて言ってプレゼントしてくれたくせになぁ」
脱力する俺の脇で、英津子は満面の笑みを浮かべている。そして、また掌を差し出した。
「だからね、プレゼント頂戴」
「………」
「えっちゃんも欲しいって」
頭が痛い。全くこいつには敵いっこない。
俺は溜め息を一つ吐き、ハンガーに掛けたダウンジャケットに袖を通した。ドア脇のフックから、車のキーとチェーンのついた財布を手に取る。
そうして俺はドアに手を掛けた。

「行かないのか?タラタラしてると置いてくぞ」
ぽかんとしていた英津子が満面の笑みを浮かべてベッドから飛び降りた。

「やっぱり、よっちゃん大好きっ」

全く本当に、コイツには………





「きゃーホワイトクリスマスだねぇ」
「毎年だろうが……」
俺の愛車に乗り込み、手を擦りながら窓の外を眺め、エンジンが暖まるのを待つ。
「今日がメインイベントなのに、イブの方が盛り上がるって不思議よね」
英津子が鼻の頭を赤くしながら言う。真っ赤なマフラーと手袋も手伝ってサンタみたいだ。

「どこ行く?」
エンジンの出力を上げ、暖房をMAXまで捻る。少し冷たい風だが直に暖かくなるだろう。
「ダイヤモンドのアメリカンが飲みたいっ」
「………は?」
俺は言葉を無くす。ダイヤモンドって……
「ね、ドライブがてら行こうよっ」
「………ふざけんな!!!!」
「ふざけてないもん」
………空いた口が塞がらないと言うのは、正に今の俺だ。このアマは……怒りよりも疲れの方がドッと俺を支配する。眉間に親指と人差し指をあてる。頭の痛い話に目眩がする様だ。
ダイヤモンドと言えば、この雪深い奥地から50キロ以上離れた海沿いの喫茶店だ。夏、海水浴がてら遊びに行った時、いたく英津子が気に入ってしまったのだ。
まず、行くとすれば山を二つ程越さなくては行けない。盆地のここでもこんな大雪だ。通行止めでも不思議ではない。
「無茶言うなよ。山は通行止めだろ、きっと。もっと別の要求に考え直せ」
溜め息を吐きながら顎をハンドルに乗せる。横目で英津子を窺うが、全く諦めていない表情だ。
「国道通れば良いじゃん」
………おまえなぁ。
国道は他の迂回路が通行止めだから、多分、いや確実に渋滞の筈だ。その上、雪も降ってるから速度規制も厳しいだろう。
運転しない奴は簡単に言うが、雪道の運転は通常の3割増で疲れるんだぞ。
「………如月で我慢しろ」
俺は投げ付ける様に言い、シフトノブをドライブまで下げる。
「やだっ、ダイヤモンドぉぉ」
駄々を捏ねる英津子を乗せ、俺は宣言通り町のスーパーマーケット「如月」(キサラギ)に向かった。


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