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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの絆<後編>-2

「宮木さんが困ってるね」
(って、困らせてるのは俺か…)
「光輝のせいで委員会の仕事も中断されちゃった事だし、今日はもう帰ろうか?送るよ?」
「え、えっと…」
俺の申し出に、宮木さんが少し困った様な顔をする。
「わ、私は…」
光輝をチラッと見てから視線を落としてしまったけれど、どうやら真剣に悩んでくれている様だ。
この状況で一緒に帰って貰えるとは思わないけど、こうも真剣に悩んでくれると期待したくなってしまう。
でも…ちょっとこれは、イジワルが過ぎたかな?

「ねぇ、松田っ!」
宮木さんが返事を躊躇っている中、急に妙に明るい声が静かな空間に響き渡った。
「私の存在、完全に忘れてるでしょ?」
「は?」
やっと呼吸が整ったであろう水沢が、妙にニコニコと…口を挟む前に、今がどういう状況かくらい、ちゃんと考えて欲しい。
「忘れられてる方の身にもなってみなさいよ!虚しいのなんのって……」
呆れて何も言う気が起きない俺に向かって、水沢が一人でペラペラと話し続けている。
水沢のその奇怪な行動には、光輝と宮木さんも開いた口が塞がらないといった感じだ。

「あ〜、なんか疲れちゃった!ねぇ、聖…ちょっと付き合ってくれない?」
水沢は肩や首を動かして、いかにも『私、疲れてます』とアピールしている。
「へ?な、何に?」
「ん〜、そうだなぁ…今日はアイス!駅前に新しく出来たお店、気になってたんだよねぇ……瀬沼、私が聖を連れてっても良い?」
(あぁ、そういう事か…)
水沢がどうしてこんな行動に出たのか…光輝に言った一言で、なんとなく想像がついた。
要は仲裁…そして、宮木さんへの助け船といった所だろう。

「俺は構わないよ、水沢。博也もそれで良いよな?」
光輝も水沢の意図する事には気付いているらしく、俺に向かって同意を促す様に視線を向ける。
「はぁ…仕方ないね。今日のところは退いてあげるよ」
俺は溜め息を一つ吐いてから、渋々了承した。
まぁ、仮に俺が嫌だと言ったところで、水沢には通用しないだろうからね。


宮木さんが帰った教室内…光輝は腕を組んで、近くの机に徐に腰掛けた。
その視線は、挑発するかの様に俺へと向けられている。
「博也…聖はお前の気持ち、これっぽっちも気付いてねぇよ?」
(そんなこと…光輝にだけは言われたくない……)
「その言葉…そっくりそのまま光輝に返すよ」
「俺は良いんだよ。俺はお前みたいに、今、焦る必要は無いからな!」
光輝の表情からは、余裕が読み取れる。
光輝の態度と言葉…その全てが、俺の神経を逆撫でする。

「随分と余裕だね、光輝。10年の絆が有るから、宮木さんはそう簡単に自分から離れない…そう思ってんの?甘いんじゃない?」
「どうして…それを……」
10年…その言葉を言った途端、光輝は眉をひそめた。いぶかしげに、俺へと視線を這わせる。
「知らないとでも思ってたの?二人がお互いの存在に気付く前から、俺は二人の約束を知っていたってのに……」
「な、んで…聖に聞いたのか?」
「さぁね。自分で考えれば?」
俺がどうしてそれに気付いたのか、口が裂けても教えない。
桜を見つめる光輝と宮木さんが似ていたからなんて…そんなの、教えられる訳がなかった。


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