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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの絆<後編>-1

「松田っ、待って!」
教室から飛び出した俺を、水沢が慌てて追い掛けてくる。
「絶対に邪魔はさせないんだからっ!」
水沢は俺の腕を捕まえると、両腕でガッチリと抱えこんだ。強い力でしがみついたまま、引き剥がそうとしても剥がれない。
(コイツ、しつこい!)

「水沢、“お節介”って言葉知ってる?水沢は良かれと思ってやってるんだろうけど、宮木さんにとっては要らずお世話かもしれないよ?自己満足なんじゃないの?」
「そんなの知らないっ!私は、私の為にやってるんだからっ!」
「そぅ。宮木さんは可哀想だね、自己中な友人に振り回されて…同情するよ」
「松田には関係ないじゃないっ!」
「その言葉、いつも俺が水沢に言ってるよね?俺の気持ちが理解出来るって言うなら、余計な事しないで貰える?目障りだから」
強い口調で言うと、水沢は怯んだ様に少し手の力を弱めた。
俺はその隙に水沢を振りほどいて、全速力で駆け出す。


「まっ、松田っ!ちょ、ちょっと…ま、待ってっ!」
水沢は諦める事なく、いつまでも俺の後を追い掛けて来る。後方からの容赦無い叫び声は、廊下に響いてかなりやかましい。
「ダ、ダメ…だってばぁっ!あ゛ぁっ!」
でも俺は、その声を無視して教室のドアに手を掛けた。

ガンッと…耳に痛いほどの音が響く。勢い良く開かれたドアが、そのあまりの衝撃に震えている。
(やっぱりこういう事か…)
教室の中…今まで二人っきりだったであろう光輝と宮木さんが、弾かれた様に俺を見た。

「あっ、絢音…大丈……」
宮木さんは、俺の後ろで息も絶え絶えになっている水沢の姿を見るなり、心配そうに顔を歪めてこちらへ来ようとした。
けどその動きは、瞬時に光輝に制止されてしまう。
光輝は宮木さんの腕を捕まえて、俺に刺さんばかりの鋭い視線を向けている。
『お前には渡さない』
その瞳は、俺にそう言っている様な気がする。

光輝が宮木さんにどんな感情を抱いているかなんて、俺にとっては一目瞭然だった。敢えて本人に確認するまでもない。
宮木さんに向ける瞳が俺と同じだから、嫌でも分かってしまう。
そして宮木さんの気持ちも…誰を想っているかなんて、火を見るより明らかだ。

でも、だからって…そう簡単には諦められない。諦めてやる義理も無い。
それに、二人が両想いだって…通じ合わなければ、ただの片想いと変わらない。
どんなに光輝が想っていても、あの鈍感な宮木さんに伝わらなければ意味はない。
それなら、条件は俺だって同じ筈だ。まだ諦めるには早すぎる。

「俺は退くつもり無いから」
俺は、光輝を見据えて言ってやった。
光輝の瞳が更に鋭くなっても、そんなのは痛くも痒くもない。


しばらく光輝と睨みあっていると、不意に宮木さんの姿が目に映った。
宮木さんは光輝に腕を掴まれたまま、皆の顔を交互に見比べている。どうしたら良いか分からないといった感じだ。
俺はその姿を見た途端、不謹慎にもつい吹き出しそうになってしまった。
決して馬鹿にしている訳ではなくて、なんと言うか…オロオロしている様子が可愛くてさ、つい。


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