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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの嫉妬-5

「放してってばっ!」
何度目かにそう叫んだ時、やっと光輝君がこちらを振り返った。
「嫌だね」
(はぁ?)
「なによ?訳わかんない…」
「それは俺のセリフ。こないだ、博也と何が有ったんだ?」
光輝君が、私を真っ直ぐ見つめる。とても真剣な瞳で…

「光輝君には関係無いって言ったじゃないっ!もういい加減、放してよっ!」
(心配なんて…してくれなくて良いよ……)
「放したら聖は逃げるだろ?博也と何が有ったのか…素直に教えれば、今すぐにでもこの手を放してやる」
光輝君の手に、より一層力が込められる。
「何よ、勝手ばっかり言わないでっ!本当に光輝君には関係無いんだから、これ以上私に干渉しないでよっ!」
「断るっ!」
(苦しい…)
「何の権限が有ってそんなこと言うの?10年も離れてたっていうのに…光輝君は私の何を知ってるっていうのよっ!?何も知らないくせに、もう私を振り回さないでっ!」
(もう…お願いだから、これ以上好きにならせないでよっ!)
喉が痛くてヒリヒリする。
気付いた時には、夢中で叫んでいた。
本当はこんな事、全然思ってないよ。でも自然と…言葉が喉元を通っていた。

私の腕を掴む手が、力なく下ろされる。
光輝君の苦しそうな表情を見て…自分がどれだけ酷いことを言ったのか、初めて気付かされたの。
でも私は、そのまま光輝君に背を向けた。
罪悪感を感じながら…


それから休み時間の度に、光輝君と何を話したのかを絢音にしつこい程訊かれてる。
けど私は、だんまりを決め込んだまま…絢音に話すつもりは無い。

放課後まで、そのやりとりは平行線のまま…私は絢音の質問から逃げる様に、ホームルーム終了と同時に教室を飛び出した。


「あっ、宮木さん!今、宮木さんのクラスに行こうとしてたんだ!」
Sクラスに行こうかどうか迷っていると、何ともタイミング良く松田君と出会した。
今回ばかりは、松田君の方から来てくれて本当に助かった。
だって、松田君に用が有っても、光輝君には会いたくないから…

「風邪はもう大丈夫なの?」
「うん。迷惑かけてゴメンね」
「いやいや、宮木さんなら大歓迎だよ!」
「本当に…ゴメン……」
「良いって!それよりさ、宮木さんが休んでる間に、集まりを一度開いたんだ…」
松田君が鞄を漁って、分厚い紙の束を取り出す。
「とりあえず、今日はこれをまとめようと思うんだよね…コピー機が有った方が良いから、うちの棟の進路室近くの部屋、借りといたよ!」
(え?Sクラスの…棟……)
私の心臓がドクンと跳ねる。
「さ、さすが委員長!抜かり無いね!」
(ま、まさか光輝君に…会わない…よ、ね?)
平然を装っていても、背筋をツーと冷たい汗が伝うのを感じる。
午前中、あんな事を言ってしまったのに、光輝君に会ってどんな顔をしたら良いのか分からない。正直、会うのが怖いの。


松田君の後ろに隠れてビクビクしながらSクラスの棟を歩いていた私は、さぞかし滑稽だったと思う。
でも幸運な事に、誰にも会わなかった。もちろん光輝君にも…


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