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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの嫉妬-2

「あれ?宮木さん、今日は松田君と一緒じゃないの?」
クラスメイトの言葉にハッとして、私は視線を教室内の時計へと移した。
気付いてみれば、放課後になってもうかなりの時間が経っている。

(やっぱり今日は…松田君…来ない…かな……)
待っていた訳ではないけど、なんとなく…また今日も笑顔で私を迎えに来るんじゃないかって思ってた。
昨日、私の無神経な言動で傷付けてしまったというのに…私はホント、身勝手だよね。

(迎えに行こう。迎えに行って…ちゃんと松田君に謝ろう)
私は“思い立ったが吉日”と言わんばかりに勢い良く立ち上がると、足早にSクラスの教室へと向かった。


窓の外は、ほんの数分で不気味な程に暗さを増していて、分厚い雲が今にも嵐を呼びそうな雰囲気を漂わせている。
Sクラスの校舎はいつも以上に静かで、通い慣れた筈なのにやっぱり緊張してしまう。
もうすぐで目的の教室に到着する…ちょうどその時、目に入った光景に私は固まってしまった。

(な、んで…帰ったんじゃ…なかったの?絢音……)
廊下から、普段は自習室として使われている教室の中がよく見える。
私の視線の先には、光輝君の姿と、先に帰った筈の絢音の姿が…
(ど、して?……どうしてこんな所で…二人っきりでいるの?)

教室の中から、二人分の笑い声が聞こえる。
楽しそうに弾むその声は、まるで幸せな恋人同士のものみたい…
(どういう…関係…なの?ま、さか……嫌だ、こんなの…聞きたくないよ……)
私は耳を両手できつく塞いで、その場から逃げ出した。


「うわっ!」
耳を塞いだまま前も見ずに走っていた私は、反対側から歩いて来たであろう人に勢い良く激突してしまった。
その人が、とっさに私を抱き留めてくれる。

「だ、大丈夫?……って、宮木さん?泣いてるの?」
頭上から聞こえる優しい声に顔を上げると、そこには、私を心配そうに見つめている松田君の瞳が有った。
「ま、つだ…くん……」
「どうしたの?」
「見たく…なかったのに……こんなの…知りたくなかった……もう…私…わかんないよ……」
「えっと…少し落ち着こうか?とりあえず、教室に入ろう。もう誰も残ってないから……」
そう言って松田君は、ゆっくりと私を教室の中へと導く。
私の瞳からは、自然と涙が溢れている。苦しくて苦しくて…自分が泣いているという感覚すら、まるで感じられない。


教室に入るや否や、私は松田君の胸を借りて大泣きしてしまった。まるで幼い子供の様に…
そんな私の背中を、松田君はそっとさすっててくれる。
今、松田君がここに居てくれて良かったと思う。
だって、一人で居たら…心の中を占拠している黒い染みに、胸が押し潰されてしまいそうで……


「落ち着いた?何が有ったの?」
しばらくして涙が少し収まった私に、松田君が優しく声を掛けた。背中をさすってくれる手はそのままで…
「……って、本当は俺、知ってるんだよね。宮木さんがどうして泣いてるのか…」
「な…んで……」
松田君の口から出た意外な言葉に、私は顔を上げる。
「実はさ、俺も見たんだよね。だから宮木さんが考えてること、なんとなく分かる」
(そう…だったんだ……)

「ねぇ、宮木さん…」
松田君が、穏やかな口調のままで言う。でも、その瞳は全てを見透かしているとでも言いた気で、私は一瞬で怖くなった。
「宮木さんが気になってること…教えてあげようか?」
聞いちゃダメ…心の奥がそう警告してるけど、松田君の言葉を拒否するだけの気力が残ってない。


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