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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの嫉妬-1

『聖ってさぁ、光輝君の事ばっかりだよね?少しは周りがどんな気持ちを抱えてるかとか…考えたことある?』
絢音が私にそう言ったのはいつだったか…聞いた時には、その言葉の意味を深く考えたりはしなかった。
でも今になって、その真意がやけに気になって胸が騒ぐの。
絢音が言ってた“周り”って…いったい誰のことだったのかな?

水沢 絢音(ミズサワ アヤネ)は私の親友。
いつも私の味方でいてくれて、いつも私の背中を押してくれた。
私の幼稚な相談にも、嫌な顔せずに親身になってくれる唯一の存在。大切な友達なの。

でも、絢音にとっての私って、いったい何なんだろう?
絢音にとっても、私は親友なのかな?

ねぇ、絢音…
本当はどう思ってるの?
絢音の気持ちが、私には全然わかんないの。
だって絢音は、私に何かを相談してくれたことって無かったよね?
日常のことも…恋愛のことも……


「どうしたの、聖?しかめっ面なんかして…また悩みごと?」
絢音が私の顔を覗き込みながら、楽しそうに眉間を指でツンツンとつつく。
「また光輝君と何か有ったの?ホント聖って、光輝君のことで頭がいっぱいなんだから…わっかりやす〜い!」
「違うっ!」
私の口から、自分でも驚く程の強い声が出る。そしてそれと同時に、つい絢音の指先をパシッと払ってしまった。

(あっ、私…何を……)
突然の私の虚勢に、絢音が一瞬だけ驚いた様な表情を見せる。でもまた直ぐに笑顔を浮かべて、質問を再開させた。
「じゃぁ、な〜に?」
「別に…」
「別にって顔じゃないじゃない。何か有ったんじゃないの?」
「だから…なんでもないってば……」
私は絢音の質問から逃げる様に、窓の外に広がる重苦しい雨雲に目をやった。これ以上はもう、突っ込んで訊いて欲しくない。
そんな私を、絢音は無言のままじっと見つめている。
顔を見なくたって分かるよ。絢音の視線がすごく痛いから…

「ふぅん…まぁ、いっか!じゃあ、私は先に帰るね〜!」
しばらくして絢音は、軽い口調で言いながら立ち上がると、何事も無かったかの様に私の前から去って行った。
たぶん絢音のことだから、私の心情を汲み取ってくれたんだと思う。

絢音が居なくなっても尚、私は窓の外を眺めたまま…視線の先に広がる、どんよりと暗く濁った空が、自分自身の心境と重なって見える。

絢音のこと、疑いたくなんかないよ。
でもね、心の中に容赦なく広がった疑惑が消えなくて、私にはどうしたら良いか分からないの。
それどころか、消そうとすればする程に疑惑が増えて、私をきつく苦しめる。

思い切って本人に訊いてみたら、この気分は晴れるのかな?
絢音の気持ちと…
光輝君との関係を……


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