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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第一話『ヒロイン(?)は怖がり屋!?』〜-6

ミコ、やっぱり……
怖がり屋なんだな……

ミコの、らしくない一面を知って三雲は微笑む。
「可愛い…」三雲は素直にそう思った。

そろそろいいだろう、と三雲はポンとミコの頭に手を置いた。
この状況にふさわしくない優しいその感触に、ミコは顔を上げる。
すると三雲は柔らかい表情で刀の先を地面にトントンと二回当て、「チチチ」と舌を鳴らし始めた。

今ひとつ状況の呑み込めないミコは、相変わらずの硬直した顔で三雲の視線の先……茂みに目を移す。



「ぇ…、えぇええ!?」

その目に映ったものは、茂みからひょっこりと顔を出した……タヌキ。
「キュウ」とかわいらしい声で鳴きながら、こちらの様子を窺っている。

茂みに潜んでいるのは、すっかり盗賊だと思い込んでいたミコの全身から力が抜けていく。

「う…そ…?
……そ、そんな…。」

ミコは、その場にへたり込んでしまった。

その様子からこちらに悪意は無いとわかったのだろう。辺りの茂みからゾロゾロとタヌキ達が出てきて、ふたりを囲む。

……その数、ざっと十匹。みな一様に小さい体で、おそらく群れの子供達なのだろう。


「最初から…気付いてたわけじゃないぞ?」

そう言って、刀を収めながら三雲は側に座る。
放心状態のミコは、その言葉で我に返って三雲の方に振り向いた。

「ミコがあんまり怖がってるもんだから言い出しづらくて…」

三雲は言いながら、ミコの顔をちらりと見る。

「えっ?ミコ…?」

するとどうだろう、みるみるうちにミコの目に涙が溜まり始めた。
そして次の瞬間、事態は思わぬ展開に。

「うっ…、グスッ…、
……うゎあぁぁあん!!」
「…!どわあああ!!」

──ドサッ


ミコは、声を上げて三雲に抱きついた。
予想外の事態に、三雲は反応しきれず……

ふたりは、抱き合うようにして倒れ込んだ。


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