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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第一話『ヒロイン(?)は怖がり屋!?』〜-1

この物語、
最初の舞台は、山。

山。それは緑にあふれ美しく、国の象徴のひとつ━━と言っても過言ではないだろう。

特に大きさと美しさを兼ね備えた山は、絵画あるいは詩(うた)として後世に名を残していく。

『動か不[ざ]ること山の如し』──と、これは周知の通り“風林火山”語録のひとつである。

山は動かず、騒がず、浮きも沈みもしない。

そんな、静かに……しかし堂々と君臨する姿に、
無性の憧れを抱く者も多い。


しかし実際に足を踏み入れてみると、
人目を惹き付ける傾斜は大きな疲労を生み、山を彩る緑の木々はことごとく行く手を阻む。

さらに、天候の移り変わりの激しさに加えて、そこら中に獣が潜んでいたりもする。

山は、その見た目とは裏腹に様々な危険が満ちあふれている。



この物語は……

そんな山を舞台に、
少年と少女がふたり
並んで歩いているところから始まる━---…‥




第一話
ヒロイン(?)は怖がり屋!?



「ミコォォォ!! クモがついてるぞぉぉぉ!!」
「えぇっ!? ウソッ!?」
「ほっ、ほらここっ背中!!」
「えぇ〜〜っドコドコ!? 見えないよぉ〜〜!?」
「うおっ!? 毒液吐いてきやがった!!」
「イヤァァーーー!!」

………
……


静かな渓流のせせらぎ…

優しく擦れ合う木の葉…

動物達の澄んだ鳴き声…

……
………
この山で耳にする音といえば、普段ならそれくらいのものだ。
…が、今はどうだろう。

「ミコッ!!飛び跳ねろ!揺さぶって落とすんだぁ!」
半笑いで騒ぐ少年の声と

「もぉい゛や゛ーーー!!」
じだんだを踏みながら飛び跳ねる少女の叫び声が辺りに響き渡っていた。

山中を、彼らの声が支配する。獣や植物たちはストレスを受け、山全体の空気が緊張した。

しかしそんなことどこ吹く風、ふたりの旅人は狂乱気味にギャーギャーと騒ぎ続けるのだった。


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