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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第三話『暖かい夜の話』〜-3

「そ、そう…?」

首をすぼめるミコ。
その仕草を見て、夏美はうんうんと頷いた。

「なんて言うかさぁ、ミコちゃんって?大人″な感じするんだよね〜。仕草とかしゃべり方とかさぁ」

夏美の言う通り、ミコの顔立ちや声色、物腰などには落ち着いた雰囲気が感じられる。
 その言葉に、三雲も頷いた。

「確かになぁ。……たまに暴走するけど」

その一言が余計だった。

『ゴンッ!』

再び後頭部に鉄拳が飛んだ。

「痛ってぇな〜、何も殴ること…」
「………」

 ユラリ、三度拳が振り上げられる。

「あぁぁすみませんすみませんもうそんなこと言いませんからどうかその手を収めて下さい」

 退け反りながら情けなく命乞いする三雲。

「はぁ…、馬鹿……」

ため息と共にミコは腕を下ろした。
そして、クスクス笑いながら様子を眺めている夏美に目を向けて、首を横に振った。

「…私、大人なんかじゃないよ。今みたいに…すぐムキになっちゃうし…」

伏し目がちに言うミコ。
が、今度はそれに夏美が首を振り返した。

「?大人″…って、そういうことじゃないと思うよ。まぁ実際まだ子供なんだし、そんな暗い顔しないでよ、ミコちゃん」

二人より私の方がよっぽど子供だよ。そう言おうとしていたミコは、夏美の言葉にゆっくり頷いた。

「うん、そうかな………そうだよね」

私、変に大人ぶろうとしてたのかな……。月を見上げて、ミコは小さく呟いた。

「ミコちゃん、すごくいい顔してるよ。ね。三雲くん?」

「…ん、今までで一番いい顔してるかも」

言われてミコは、ハッと振り返った。
「へ、変なこと言わないでよっ!」
「痛ッ」
ミコの照れ隠しが、三雲の側頭に飛んだ。

平手なだけまだマシか……。
側頭を押さえながら、三雲は柔らかく笑う。


泉にぽっかり浮かぶ月がやけに綺麗に見えた、暖かい夜。
閉ざされた環境に生きてきたミコが色々なことに気付けた、素晴らしい一日。

微笑む夏美の重すぎる過去など、この時二人は予想すらできなかった……。



第三話 終わり


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