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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第一話『ヒロイン(?)は怖がり屋!?』〜-5

「ハァ…、ハァ…、」

緊張と興奮からか、三雲の息が上がっている。
右手は刀を抜き、左手にはより力が籠っていく。

ミコは、この時ようやく気付いた。
痛い程に抱き締められた肩。三雲の硬直を含んだ真剣な顔。
自分達の身に、何かよくないことが起きている…。

「…みく…も……?」

口がうまく回らない。
何が起きてるの?と声に出そうとする前に三雲は、首を小さく横に振った。

そして、刹那。
“異変”は再び動き出す──


ガサッ!!!
目の前の茂みが大きく動いた。

「……!」

ミコは目を見開いて三雲に抱きつく。
突然のことに思考が止まる。
全身が硬直し、声を出すことすらできない。

不安、恐怖

ミコの頭はそんなものたちに支配された。
いつのまにか三雲の腕から力が抜けていることなど、知る由もなく……



三雲は、気付いていた。

茂みに潜む者が、人間ではないことを。

……感じるのは、獣の匂い。
茂みの揺れ方から見るに、取るに足らない相手。
ミコの目には、小さく屈んだ人間が動いているようにでも見えているのだろうが…。

その証拠に、ミコは固まった表情で茂みを凝視している上、小さな体を強く自分に押し付けている。


三雲は、考えていた。

ミコは相手が動物だということに気付かずに怖がっている。
……よし、自分も気付いていないフリをして怖がるだけ怖がらせてやろう──と。

思いっ切り殴られて痛む後頭部の、ささやかな復讐。


それと三雲はもうひとつ、こんなことも考えていた。

もし、茂みに潜んでいたのが盗賊だったら……
ミコが一人になったところを見計らって、襲いかかってきていただろう──と。

そうなっていたら、三雲は対処しきれまい。相手は複数いるのだから。
自分が格闘している間にミコは拐(さら)われていただろう。事によっては、その場で斬り殺されていたかもしれない。

三雲は想像して、顔を青冷めさせた。


「うっ…、グスッ、ひぐっ…」

三雲の脇で、ミコは不安と恐怖に耐えきれず遂にぐずり出してしまった。
その姿は、か弱く幼い女の子そのもの。

あれ……?
やりすぎたかな……?

そう思って、三雲はミコの顔を軽く覗き込んだ。
ミコはそれにも気付かずに、今にも泣き出しそうな顔でブルブル震えている。


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