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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第一話『ヒロイン(?)は怖がり屋!?』〜-4

「……!ミコーー!!」

三雲は、ミコの両脇の茂みが微かに動いたのを見逃さなかった。

だがミコは反応しない。
「あーぅ」とか「きゃー」とかワケのわからない声をあげながら、トボトボと歩き続けている。

……この鈍感女め!……
(↑人のこと言えない…)

三雲は心の中でそう叫んで、ミコの元へ走り出した。



──茂みに潜んでいるものは一体何者だろう──


時は1530年……幕府衰退期である。
幕府の衰退によって、治安が悪化していた時期である。

結果、激増した孤児や流浪人。
乞食(こじき)になるしか道の無かった彼らは、団結して、人の道を外れることを選んだ。
これが1500年代前・中期『盗賊団最盛期』が発生した背景である。


盗賊が好んで潜む場所……それは山林や深い森。

茂みに潜んでいる者……それが盗賊である可能性は十分にある。むしろ、その確率の方が高いと言ってもいい。

血相抱えて走る三雲は、その事を十分に心得ている。盗賊と遭遇してしまった場合、ただでは済まないということを知り得ている。
背を伝う冷や汗が、それを如実に物語っていた。


一方その時ミコは、完全に自分の世界に入り込んでいた。

(子供っぽいって思われたかな…。)

強がってはいるものの、恥じらいの見える表情は乙女そのもの。
異性に醜態を晒してしまったことは、普段冷静な彼女の視界を狭めるには十分すぎる理由だった。

当然ながらミコは、盗賊に抗う術など持っていない。
今まさに生命の危機に瀕しているという事実に、彼女はまだ気付いていない。


そして再びミコの脇の茂みが「ガサッ」と音をたてたその時、三雲がようやく追い付いた。
ミコの肩を左手で抱き、グイッと引き寄せる。

「ミコっ!」
「きゃっ!?」

突然のことに何が起こったのか全く理解できないミコは、三雲の声に焦りの色が混じっていたことに気付かない。

「な、なに……!?」

見上げた三雲の顔が目に映った瞬間、ミコは言葉を失った。
そこにあったのは、今までに見たことのない真剣な顔。
(これが……三雲!? こんな顔も……するんだ)
ミコの心臓は高鳴っていた。それは急に肩を抱かれたからという理由だけではない。
その、自分の中に確かにある“驚き以外の感情”が一体何なのか、ミコはまだ理解することができなかった。


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