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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの会話-5

「はぁ…腹痛い……で、打ち合わせね。」
「超気分悪いっ!」
「怒らない怒らない!」
「誰のせいよっ!」
「まぁまぁ…それで、質問文についてなんだけど……」
やっと落ち着いた松田君は、淡々とアンケートの件について話し始めた。
(はぁ…やっと本題に入ってくれたよ……)
安心した私は、チラッと窓際の席を盗み見る。その席は勿論、光輝君の席。
光輝君はやっぱり頬杖をついていて、前の席の人と話しながら私を見ている。
私はその視線を感じてついドキドキしてしまったけれど、光輝君の表情は、なんだか少し厳しくて怖かった…


それから一週間…私はちょくちょくSクラスに行っていた。
でも何故か、光輝君にはずっと避けられている様な気がする。だって、挨拶は愚か、目を合わせる事だってしてくれないの。
せっかく再会出来たのに、その距離は以前よりももっと遠くなった気がして…今はもう、Sクラスに行くのが物凄くツラい。
私の心の中に、暗くて重たい霧が立ち込めちゃってるみたい…

「はぁ…嫌だな…」
「何が?」
つい漏らしてしまった言葉を、運悪く絢音に拾われてしまった。
絢音の事だから、この時点で何の事なのかは大体の察しがついていると思う。
「Sクラスに行くのが嫌なの…」
「光輝君に会えるのに?」
「それが嫌なのっ!」
「なんでぇ?」
「だって…冷たい……」
「ふぅん…なら、松田に言って場所を変えて貰えば?」
「それは…イヤ……」
「なんで?」
「光輝君に…会えなくなっちゃうもん……」
蚊の鳴く様な声でそう言った私を、絢音は優しい瞳で見つめている。敢えて何も言わずに…

言ってる事が矛盾してるのは、自分が一番よく解ってる。
結局私は、どんなに冷たくされても…どんなにツラくても…光輝君に会いたいの……

「恋する乙女は複雑だねぇ…まっ、頑張って〜!」
そう言うと絢音は、いそいそと何処かへ行ってしまった。
(もおっ!そんなんじゃないってば…)


放課後の委員会の間も、私の頭は光輝君の事を考えていた。
皆の前で話す松田君の声が、右から左へと流れて行く。ちゃんと聞いておかなきゃダメなのに…

「宮木さん、み〜や〜ぎ〜さんっ!」
「うわっ!」
ボーっとしている私の目の前に、いきなり松田君が顔を出した。
驚く私の姿を見て、松田君はあからさまに呆れてる。
「委員会…終わったけど?」
「え?」
「今日の話、全然聞いてなかったでしょ?」
「ご、ごめんなさい…」
「まぁ、良いけどさ…アンケートの件、ちょっと訂正して本刷りに移す事になったから。」
「そうなんだ…」
「それで、今日中に訂正だけでも済ませちゃいたいんだけど、大丈夫かな?帰り送るから…」
そう言うと松田君は、窓の外に視線を移した。
(あぁ、そういう事か…)
窓の外では、もう空が赤く染まり始めてる。
ずっと考え事をしていた私は、委員会がかなり長引いていた事にも全然気付いていなかった。
「うん。大丈夫だよ!場所はまた松田君のクラスで良いの?」
「……そうだね。」
「ぇ?」
「そうしよっか!じゃぁ、俺は鍵を返してから行くから、先に行っててくれるかな?」
「う、うん。」
(松田君…なんだか元気が無い様に見えたけど…気のせいかな?)


松田君の様子が気になりながらも、私は先にSクラスの教室へと移動した。
夕陽が射し込む校舎内には、生徒は殆んど残ってなくて、いつも以上に寂しい感じ…


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