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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの会話-4

初めて入ったSクラス専用の校舎は、なんだかがらんとしてて寂しい印象を受ける。
廊下から見える教室の中にはどこも数人の生徒が居て、真面目に勉強しているみたいだった。

「はぁ…なんかこの棟、私達の所と全然印象違うね…」
「そぉ?」
「うん。静かで…緊張する。」
この緊張は実は、静かだって事だけが原因じゃないの。光輝君に会えるかも知れないから…それで緊張しちゃってる。
「大丈夫だって!こっちでだって、殆んどの奴が宮木さんの事知ってるから!」
「え?」
(私の事…知ってるの?)
「ねぇ、それって…」
「さぁ、着いたよ。」
私が訊こうとした途端、松田君の声が私の言葉に被った。
「ここが俺の教室!さぁ、ど〜ぞっ!」
松田君がドアを開けて、私に中へ入るよう促している。
私は一つ深呼吸をしてから、教室へと足を踏み入れた。

「失礼します…」
私が控え目にそう言うと、教室内に居た生徒全員がこちらを向いた。全員と言っても、10人くらいしか居ないけど…
(ひやぁ、注目されちゃってるよ…どうしよぉ……)
緊張して顔を上げられない私の頭を、松田君が後ろからポンポンっと叩く。
「何やってんの?早く入って!」
「う、うん。」
そう言って顔を上げた瞬間、私の瞳が窓際の席に座る光輝君の姿を捉えた。
光輝君は眼鏡を掛けていて、頬杖をつきながらこっちをじっと見ている。でも私と目が合った途端、その視線はパッと反らされてしまった。
(……あれ?)

「宮木さん…いつまで固まってんの?俺の机は、こっち!」
全く動こうとしない私に痺を切らしたのか、松田君が私の肩を押して席へと導く。
「そこ座って!」
「は?へ?ほぇ?はわっ!」
案内されたのは一番廊下側の席で、あっさりそこ座らされた私はイマイチ状況が掴めなかった。
そんな私を見て、松田君は目を細めている。
「しっかりしてよ〜!」
「え、あっ、ごめん…」
「今日の宮木さん、いつにも増して抜け過ぎ!」
(い、いつにも増してって…)
「一言余計だよっ!いつもはもっと…しっかりしてる…筈……」
自分で言っていて、段々と自信が無くなって来てしまった。いつもの私は、お世辞にもしっかりしてるとは言えない…
「はいはい。そういう事にしておきますかっ!?」
「あっ、絶対バカにしてるっ!」
「バレた?」
そう言うと松田君は、楽しそうに声を上げて笑い始めた。
(もぉっ!この人は…)
「打ち合わせするんじゃなかったの?」
遠慮無く笑われて面白くない私は、おもいっきり冷たく言った。
「はいはい、打ち合わせ…ね。クックックッ……」
「もぉっ!笑い過ぎだよっ!」
「じゃぁ、笑わせないで?」
「笑わせてるつもりは無いっ!」
「ほらまた、そういう顔をする!これだから止まんなくなって…」
「そういう顔ってどんな顔よっ!?」
「どんな顔ってねぇ…クククッ…今度、鏡見てみたら?」
(超失礼!何なのよ、もう…)


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