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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの会話-3

「聖っ!ひ〜じりっ!」
ボーっとしていた私の目の前に、いきなりぬっと顔が出て来た。
「あわっ!あ、絢音かぁ…ビックリした……」
「もぉ…何か考え事?ホームルーム、終わっちゃったよ?」
「え?嘘っ!?」
私は教室内を見回した。けど、もう殆んどの生徒が帰ってしまっていた。

「光輝君の事でも考えてたの?そんなに気になるんなら、本人に会いに行ってくれば?せっかく同じ学校なんだからさ。」
「Sクラスになんて…行けないよ……」

私が言ったのと同時くらいに、絢音の背後からよく見知った人が顔を出した。
「なぁに?もしかして俺の噂してた?」
「あれまぁ、松田じゃない!」
「松田君っ!?どうしたの?」
「宮木さん…『どうしたの?』じゃないよっ!今日委員会だって、忘れてない?」
「あ゛…」
(すっかり忘れてた…)
「やっぱり…」
そう言うと松田君は、額に手を当ててヤレヤレといった感じに首を横に振った。
「なぁに?もしかして、委員長直々に聖を迎えに来たの?」
「まぁね。てか、もう皆集まってるから、宮木さんも急いで!」
松田君は私の鞄を掴むと、サッサとドアの所まで歩いて行ってしまった。
「え、ちょ、ちょっと待ってよっ!」
「あっ、ねぇ、聖!」
慌てて松田君に駆け寄る私を、絢音が呼び止める。そして、私の耳元で静かにこう言った。
「こんなに身近に居たじゃない、Sクラス!」

この松田 博也(マツダ ヒロヤ)君は、私が唯一以前から付き合いが有ったSクラスの人なの。
松田君とは委員会がずっと一緒で、集まりの時とかには二人でよく話をしてる。今年なんかは、松田君が委員長で私が副委員長をやってるんだ!


「………じゃぁ、今日はここまで。アンケートに関しては、さっきの内容を元にこっちで仮のものを作っておくから、また来週検討しましょう。お疲れ様でした。」
委員長である松田君の声が教室内に響くと、生徒はワラワラと席を立ち始めた。
「あっ、宮木さん!この後、少し打ち合わせしたいんだけど良いかな?」
私も急いで机の上を片付けていると、急にぽんっと頭を叩かれて、松田君に声を掛けられた。
「アンケートの件?」
「そうそう!まさか副委員長…俺を手伝わないなんて言わないよねぇ?」
「まっさかぁ…言いたいけど!」
「ったく…今日の集まり忘れてて、俺に教室まで迎えに行かせたのはドコの誰?」
「う゛…じょ、冗談だってば、冗談!本気にしないでよぉ…」
「どうだか…」
「も、もぉっ!信じてよぉ…宮木 聖、手伝わせて頂きます!」
私が力一杯にそう言うと、松田君はおかしそうに目を細めた。
「あはははっ、信じてるって!ホント、宮木さんをからかうと面白いなぁ…」
「なっ!?」
(か…からかったですとぉ?)
「クククッ…」
呆れて何も言えない私の横で、松田君はお腹を抱えて笑っている。

暫くして笑いが止まった松田君は、目元に溜った涙を人指し指で拭いながら言った。
「それで、話し合いなんだけど、どこでする?この教室、今日はもう閉めなきゃなんないんだ。」
「そうなの?じゃぁ、うちのクラス行く?遠いけど…」
「それなら俺のクラスの方が近いから、そっち使おうか?もう課外授業も終わってる時間だし!」
(うそぉ、ラッキー!)
「うん!じゃぁ、ゼヒ!」
(もしかしたら、光輝君に会えるかも知れないじゃないっ!)


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