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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜last dreamer-8

「帰ろう、マリア」


龍矢にそう言われ、マリアは気を戻す。そして、龍矢の両親に向かい頭を下げた。


龍矢の両親は微笑みながら、二人を見守っていた。龍矢たちが光の渦に呑み込まれるまでずっと……。




「母さん、父さん……ごめんな……」


そして龍矢とマリアは光の中で再び意識を失った。




龍矢が目を覚ました時、目の前には両手を交差させようとするレフェリーの姿が目の前に見えた。

だが、レフェリーの動きはひどく緩慢で、まるで錆びた金属製の人形のようにゆっくりだ。

龍矢は自分の右腕だけが思い通りに動くことを確認すると、レフェリーの腕をグローブでがっしりと掴んだ。掴んだ瞬間、今までスローモーションだった世界が速度を取り戻す。

始めに視覚が、そして次に観客達の声から聴覚を取り戻す。自分の汗とマットの匂い。次は嗅覚だ。血の味を感じることで、味覚を取り戻したことを知る。そして、身体全体に触覚が戻る。


「まだ…やれる。勝手に終わらせようとしてんじゃねぇよ馬鹿野郎………」


実際には、マウスピース(歯を守る道具)をはめているため、龍矢の声は不鮮明だったろう。しかし、レフェリーには全てがしっかりと聞こえていた。





『……ンスさん、セレンスさん!?』
「……大丈夫…です!」


同じ時に、マリアは意識を回復した。


「ボクも…頑張るんだぁっっ……!」

二人は同時に意識を失い、そして同時に目が覚めた。それは、自由の女神の悪戯(いたずら)だったのだろうか。




龍矢はゆっくりと、だが確実に態勢を立て直す。再びファイティングポーズをとり、レフェリーが続行の合図をかける。時計は、残り八秒を指していた。


『ファイッッ!』


レフェリーが掛け声と共に手を振った瞬間、龍矢はダミアンが突っ込んでくるのを視認した。その姿は当に死神を彷彿とさせる。

身体の自由は効かないが、龍矢はダミアンの次の一手を確信していた。


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