dream・road〜last dreamer-7
「…っ!タツヤ!」
マリアは前方に見慣れた後ろ姿を見た。見間違うはずもない、自分が愛する人の背中を。
龍矢の少し前方には、見たことのない一組の夫婦がいた。まるでそれに吸い寄せられるようにして、龍矢は歩を進めていく。
マリアは本能的に理解した。あの二人が龍矢の両親なのだと。そして、いつか龍矢に聞いた台詞が頭をよぎった。
「俺の両親も、流行り病で死んじまってさ、だから俺もマリアと一緒なんだ」
行かせてはいけない。
マリアは即座に判断した。
必死に走り、龍矢の腕を掴む。龍矢が振り返った時、マリアは龍矢の目に輝きが戻るのを感じた。
「帰ろう、タツヤ。そっちには行っちゃいけない」
自分の腕を掴んだ赤毛の少女を見た瞬間、龍矢の中から様々な声が聞こえてきた。
最初の出会いは、ダニーのカフェで絡まれていたマリアを助けたことからだった。
ボク、マリア!マリア・セレンス!
マリアが怒って外に居続け、風邪を引いた時もあった。
手、握っててくれる…?
俺が試合の前にナーバスになっていた時、この子は俺を励ましてくれた。
ん、緊張を解くおまじない!
そうだ。俺はこの子を守るために……。
タツヤっ…タツヤぁっ…!
龍矢は思い出した。誰のために拳を振るうのか。誰を守るために拳を突き立てるのかを。
龍矢はしばらくマリアの顔を見つめていたが、マリアの言葉に龍矢はうなずく。そして、目の前の両親に言葉を返した。
「父さん、母さん……俺、まだそっちには行けない。こいつと……マリアと生きていくって決めたから。だから、俺は行けない。いや、行かない……」
その瞬間、龍矢とマリアの周りを蒼い光が包みこんだ。
龍矢の両親は、マリアを見つめていた。その目は、とても優しく、だが少しの寂しさをたたえていた。