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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜last dreamer-4

なんて自分は無力なんだろうか。

龍矢は己の夢を叶えるために必死になって闘い、マリアもまた龍矢と自分の子を産むために自分の身体のこともいとわずに闘っている。

代われるものならば代わってやりたい。痛みも、苦しみも、全て自分が背負ってやりたい。だがそれは無理なのだ。



どうしようもない気持ちに悶々としながら長椅子から腰を上げると、ダニーは食堂へと向かった。もしかしたらテレビで龍矢の試合がやっているかもしれない。そう思ったのだ。

少し歩くと、食堂の方から声が聞こえる。ダニーは少し歩調を速めながら食堂へと向かう。食堂へ歩を進める度にざわめきは大きくなってくる。

ダニーが食堂の入り口に着くと、中には信じられない光景が広がっていた。

二、三十はあるテーブルが患者やその家族、さらには非番であろう医師たちによって埋め尽されているのだ。そして、その全員が視線を食堂に設置されている数台のテレビに注いでいた。



ダニーは何人かをかき分け、テレビの見える位置まで身を進めた。そして、そのモノクロの画面の中に倒れている龍矢を見つけた。気を失っているのだろうか、ぴくりとも動かない。

瞬間、ダニーは恐怖に支配された。もしかしたらそのまま起きないのではないか……。しかし、


『立つんだ!立てボーイ!』
『頑張って!』
『タツヤ兄ちゃん!』


なんということだろう。食堂の皆が龍矢を応援しているではないか!

皆の声援が届いたのだろうか、画面の中の龍矢が必死にもがきながら立ち上がった。


『タツヤ……頑張るんだタツヤ!』


ダニーは自分でも気付かぬ内に涙を流していた。

今自分に出来ることなど何も無い。だが、祈って待つことくらいは出来る。

ダニーは胸元で軽く十字を切ると、マリアが闘っている分娩室へと向かった。





(なに…立ち上がってんだよ……)


ダミアンは自分の奥から沸き上がる感情を抑えられなかった。

自分は絵図(計画のこと)通りに事を運んだ。そして相手をマットに這わせたのだ。自分のパンチなら並大抵の奴は沈むのだ。なのに……。

目の前にはカウントナインで立ち上がった東洋の戦士。


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