dream・road〜last dreamer-16
「ダニー……」
「行ってこい」
病室の扉に手を掛ける。扉の横には《マリア・セレンス》と表記されている。
扉を開ける。そこには、愛すべき人と、新たな命が眠っていた。
「ん……」
扉を開ける音に気付いたのか、マリアが目を開く。マリアは二、三度瞼をこすると龍矢に向き直った。
「タツヤ……!」
「よぉ」
余程衝撃的だったのか、マリアは両手を口に当てながら、その目に涙を溜めている。
全てが愛しい。
彼女の真っ赤な髪も。
よく動く大きな瞳も。
涙に震わせているその声も、なにもかもが愛しい。
陳腐だと自分でも思ったが、それ以上の言葉が出てこない。
「タツヤッ……タツヤァッッ……よかった、よかったよぅ。無事に帰って来てくれて……ボクッ…」
「泣くなよ」
そう言いながら、まだ軋む右手でマリアの涙を拭く。
夕陽に照らされたマリアは、少し弱々しく見えたが、それ以上に神々しく、美しかった。
「マリア、手、出してくれないか……」
「え……」
マリアの手を取ると、龍矢はさっきダニーから受け取った小箱を開いた。
中に入っていたのは指輪。
その指輪を、マリアの薬指にそっとはめる。
「タ……タツヤ…」
マリアが上目使いに龍矢を見る。龍矢は穏やかに微笑みながら言った。
「結婚しよう」
マリアの目から涙が溢れる。龍矢はマリアを抱き寄せ、そっとその唇をキスをした。