dream・road〜last dreamer-13
（強えぇなあ……。パンチもスピードもテクニックも。なにもかもが俺より上だ……）
景色が、まるで紙芝居を捲るようにゆっくりと流れる。
（だけどな……！）
足に力を入れる。無理矢理踏ん張って、リングから足が離れないようにした。
（思いだけは……）
態勢を立て直す。目の前には止めを刺そうとするダミアンの姿があった。
（ボクシングに対する思いは……！）
右腕に力を込める。
ダミアンが追撃のためにさらに踏み込む。右腕を振り上げた瞬間、ダミアンは異変に気付いた。
龍矢の足が、しっかりとリングに吸い付いているのだ。
普通顔が吹き飛んだならば、次いで体が引っ張られ、そして足がリングから離れて倒れるはずなのだ。
耐えやがった……!?
そう思った時は遅かった。ダミアンは既にストレートを放っている。そしてそれは、龍矢の顔面を直撃すると思っていたが、見事に龍矢はそれを避けた。
（タツヤ……タツヤ・ミドォッッ!!!）
ダミアンの目の前には、龍矢の右拳が。
グチャ。
水気を含んだ音が響き、龍矢の拳がダミアンの顔面に炸裂した。
「負けねえんだよおぉぉぉ!!!」
龍矢のライトクロスが決まる。そのまま龍矢は拳を振り抜いた。
ダミアンは吹き飛びはしなかったものの、膝は笑い、意識は半分飛んでいた。
その目には、試合前の自信と己の強さに満ち溢れたような眼差しはすでにない。
ダミアンは必死に動こうとするが、身体は動かない。限界が来たのだ。
龍矢が構える。足が回り、次いで腰、肩が回った。
ダミアンは動くことが出来ず、ただその光景を眺めることしか出来ない。