dream・road〜last dreamer-12
「なぁ、みんな」
セコンドアウトの声が響き、龍矢以外がリングから降りるとき、龍矢はみんなに向かって言った。
「ありがとうな」
みんなが何も返事をしない間に、ゴングが鳴って龍矢はリングに向かっていった。
「馬鹿野郎が……」
ミゲルが龍矢の背中を見ながら呟く。
「礼を言いたいのはこっちだ……」
ミゲルは、涙を流しながら応えた。普段なら絶対に見せない顔をしながら、涙を流し続けていた。
満身創痍(まんしんそうい)の龍矢が向いた先には、同じく傷だらけのダミアンが立ちはだかっていた。
お互いにファイティングポーズを取ったまま動かない。そして、二人の視線が絡み合う。
目を合わせながら、二人は同じ思いに至った。
この一合で決着(ケリ)をつける。
次の瞬間、二人は同時に足を動かした。
ダミアンの鋭い左拳が、龍矢の突進を阻む。その突き出した左は、ジャブというよりはむしろストレート。
『ゥグアァッッ!!』
勢いを殺された龍矢に、ダミアンの拳が烈火のごとくに襲いかかる。
上下左右…各所から襲い来る衝撃に、龍矢の視界がぼやける。そしてその視界のぼやけは、ダミアンにとってはまたとない好機。
(俺が一番……強いんだよっ!!)
『ガッッッ!!』
ダミアンの叫びと共に繰り出された拳が龍矢の顔を捉える。鈍い音が響き、龍矢の顔が後方へと爆(は)ぜた。
龍矢は身体から意識が飛ぶ感覚を味わう。しかし、必死に意識を繋ぎ止めた。