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『sick for ×××』
【若奥さん 官能小説】

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『sick for ×××』-3

「ふむふむ。なーるほど…」
夕食の準備を整え、陽が仕事から帰ってくるのを待つ間、書店で購入した妊娠・出産モノの専門書を早速読んでいた。
開いているページは「妊娠初期のハウ・トゥ・セックス」…。
本屋さんでその手の本を何冊も吟味した結果、妊娠中のセックスについて詳しく書かれた記事があって、体位もわかりやすくカラー図解で表わされていたその1冊を選んだ。
「深い挿入はダメかぁ…、やっぱりなぁ。指の挿入も膣内を傷つけやすいからダメ。あーん、つまんなーい」
開いた本の上に突っ伏す。
…こんなことで悩んでる妊婦ってわたしくらいだよねぇ…。
顔をのせていたページに、妊娠初期でも出来るセックスの安心な体位の例がいくつか載っている。
かわいらしい感覚のイラストでそんなえっちなことされても余計にヒワイわ…。
「けつごーはあさく、ゆっくりとー」
声に出して読むと自分のしたいことがバカらしく思えてきた…。
まさか、陽に向かって「この本と同じようにして(はーと)」なんて頼むのもちょっとね。
がちゃっ。
「ただいまー」
びくん!と身体が跳ね起きる。
陽が帰ってきた!
あわてて本を閉じた。
「おかえりっ…」
「いやー、疲れた。今日はすっげー忙しかったよ」
どかっとソファーに座りこむ。
「お疲れ。どーする?お風呂先?」
「そーだな。先に入ってくるわ」
ネクタイを緩める。脱いだ背広とズボンを受けとって、隣室にあるクローゼットにかけた。
「ん?なんだこの本」
陽の声。
しまった!
あの本、台所のテーブルに載せたままだった。
あわてて陽の方に駆け寄る、が、もうその手はぱらぱらとページをめくっていた。
「泉」
…なんか、いわれるかな…?
ところが、陽はニッコリと笑っている。
「お前も母親って自覚でてきたんだな。えらいじゃん。わざわざ本買って勉強してるんだ」
「…まぁね」
「感心感心。んじゃ風呂はいってくらー」
陽が浴室に消えると、ふっと息をついた。
わたし…、セックスの記事ばっか気になってた。これってば、ふつーに妊娠の専門書だもんね。
……重症かもしんない。

夕食を済ませた後、ソファーに座ってテレビを見ている陽の隣に座り、身体を寄せた。
陽はなんにも言わずに肩に手をまわしてくれた。
えっちするだけが身体のつながりじゃないんだよね…。
陽の視線はテレビに注がれたままだけど、掌の温かみはしっかり伝わってる。
こーゆーのも大事にしなきゃ。
すりすりと陽の胸に頬を摺り寄せた。
「ん?どした」
視線をわたしに移す。
「陽…、わたしすっごいしやわせ」
「な、なんだよ、いきなり。おかしーんじゃねぇか?」
照れた様子。あたりまえか。
両手で陽の顔をとらえて、軽いキスをした。
「だいすき」
たちまち陽の顔が真っ赤になる。こーゆーのは弱いのだ。
そんな反応されると逆にごろごろ甘えたくなる。
ぎゅっと抱きついた。
スキンシップスキンシップ。
こーゆーのも胎教にいいんだわ、きっと。
なのに、
「もしかして、お誘い?」
なんてゆうからクッションを顔に押し付けた。
「…っバカ!」

わたしってそんな飢えてるように見えるのかな…。
ふてくされたまま布団にはいった。
陽に背を向けて。
彼はよっぽど動揺したのか、「ごめん。なんかわかんないけどごめん」を連発していた。
わたしが突発的なコトをしたものだから陽には理解にくかっただけ。
だからそれでそのままおしまいにすればよかったんだけど…。
「わかんないなら謝んないでよ!」
なんて言っちゃった…。
かわいくないわたし。
陽はついに困り果ててリビングに戻ってしまった。
わたしは布団に入ったものの、気になって眠れない。
1時間くらいして、陽が布団に入ってきたので、あわてて寝たふりをした。
彼はそれに気づかず、背を向けてるわたしを後ろから抱きしめ、そのまま眠りについた。
わたしはその頃合を見計らって、くるっと陽の方を向いた。
こんなカッコのまま寝たら身体痛くなるのに…。
そっと陽を仰向けにした。
そして寄り添う。
あったかいよぉ…。
ごめんね、子供みたいだよね、わたし。もっと優しくしたいのにな。
せめて今日買った本をちゃんと読んで役立てよう…。
おかーさんの自覚がちゃんと身についたら、自分のことだけじゃなくて、きっと陽のことも深く考えてあげられるわ。
待っててね、陽。でも今だけ甘えさせてね…。


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