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『sick for ×××』
【若奥さん 官能小説】

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『sick for ×××』-4

「それはぜーたくとゆーものよ、泉」
楓に指をつきたてられた。
「そ、そうかな…」
「アンタの悩みなんて次元が低いわよ」
それに賛同するかのように、彼女の愛娘・由宇ちゃんが「あーあー」といっている。1歳数ヶ月だが、生まれたときから女はオンナ。
楓は中学時代からの友人で、2年前、わたしと同様に、やはり出来ちゃった結婚を果たした。
しかし、旦那サマは彼女とはひとまわりも違うかなりの年上。加えてバツイチ。
そんな楓はわたしのよき先輩・アドバイザー。
今日はファミレスで一緒に昼食をとり、今こうして食後のお茶を口にしている。
そこでわたしの思いのたけをぶつけてみた。
「陽さんなんか全然いい人じゃん。そこいくとうちのは前の奥さんに子供が一人いるでしょ?だからこの子が出来たっていったとき、別に感慨深くもなかったわけよ。なんだか、男としての責任で結婚してやったって感じするもん」
「それは、ウチも同じだと思うけど…」
「なーにいってんのよ。あんなによくしてくれてる人なのに。あたしはむこうの実家に同居だからさ、旦那は妊娠中はお義母さんになにもかも任せればいいって気楽に言うけどさ、嫁の立場としてはそうもいかないじゃん。できることはちゃんとしたいんだけど、お姑さんは何もしなくていいって言うのよね。別に悪い方じゃないんだけど、あたしの居場所はドコって感じなのよね。でもそれで旦那は安心してるの、バカみたい」
う、うーん。逆に愚痴られてるよーな…。
「お義母さんはこの子が産まれたら産まれたで、育児に専念しなさいだって言うんだけどさ。親切心で言ってるのかもしれないけど、あたしは子ども製造機でも育児マシーンでもないっての」
しっかりしてる彼女だからこそ、こう言えるんだよね。
あたしなんか喜んでお願いしちゃいそう…。
「まぁ姑はともかく、旦那がね。この子ができて、意外に子煩悩なのにはびっくりしたわ。おむつ替えも、お風呂も入れてくれるし。きっと由宇が女の子だからよ。妊娠中の態度とは大違い!返ってうそ寒く感じちゃうもん。あたしの方にどれくらいの関心があるのかってたまに思っちゃうわ」
コーヒーをぐいっと飲んだ。
「この子が生まれて随分たつのに、セックスはおろか、キスだってしてくれないのよ。どう思う?あたしだって全然そんな気失せちゃうわよ。あの人の関心はきっと全部この子にあるんだわ」
その声には怒気が含まれている。
「まさか」
「だって、子供生まれた後に挙式するって約束だったのに、いざ生まれたとなると、『由宇のイベントが目白押しだから…』だって!逃げてんの!もう信じらんない」
わたしは、というと2ヶ月後に挙式を行うことになっている。
両家の父母からの熱い要望だったからだ。
もうすぐしたら挙式の招待状を発送する予定だが、もちろん招待客には楓も入っている。
でもそんなコト、今は言えないなぁ…。
「その点、陽さんならきっとそんな心配ないわよ。何よ、あんたの性欲ぐらいなんとか抑えなさいよ。生まれたらいっぱいしてもらえばいいじゃない」
「そ、そーだよね…」
結局、楓の迫力に飲まれてしまった。
わたしの悩みなんて…、こんなモンよね…。

その日、夕食の準備中に陽は帰ってきた。
楓と長々と話しこんでしまったせいで買い物が遅くなったからだ。
「ごめんねー。もうすぐできるけど、作ってる間におふろはいっちゃってて」
「うん…」
しかし陽は台所から動かない。
夕べのことが気がかりになってるのかな…。
わたしは手を止めた。
「ごめんね…、ゆうべは。わけわかんない怒り方して」
背を向けたまま。顔を見たら素直に謝れないのがわたしの欠点。
「ちゃんと言えばいいのに。自分のなかだけでぐじゃぐじゃって考えるから…」
言葉を続けようとしたら、後ろから抱きしめられた。
「あ、陽…」
「いいよ…、泉は今大変な時期だから、心が不安定なんだよ」
ぎゅうっ…。
陽の手に力がこもる。
「俺さ、夕べ泉が布団はいった後さ、お前が買ってきた本読んだんだ。妊婦は情緒不安定になるって…。先輩からも話聞いたりした」
…どきん。
「もっと泉の気持ち汲み取れるようにするよ…」
な、泣きそうかも…。
楓の言うとおり、わたしすっごい果報者…。
後ろから両手でわたしのおなかをおさえる。
「俺らが仲良くしてないと、この子にも影響しちゃうしな」
「あ…きら、わたし…、そんなに考えてくれるなんてうれしいよぉっ…」
陽は腕を交差してわたしの肩をぎゅっと抱いた。
「当たり前だろ?そんなの。俺ら夫婦なんだしさ…」
「ひぃ〜ん…」
ぼろぼろ涙がおちた。
わたしのバカ…。
こんなに陽を悩ませて。


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