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【大人 恋愛小説】

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出会い-2

仙台で初めて会って夕食を共にしたのは2月の半ばである。この夕食、およびそこ至る経緯は、2人の出会いの中ではお互い最も緊張した場面だったように思う。この夕食はそれまでのメル友が恋人に変わった時と言っても良いだろう。正月明けすぐに具体的な日程を信子に伝えた。信子は会う気のようである。博樹は、信子の気持ちがよくわからなかった。抱かれることを期待しているのだろうか。決して自分の男性としての魅力に自信を持ってはいない博樹は、嫌われることへの恐れもあった。嫌われて関係が終わるぐらいなら、このままメル友あるいは友達の方が良いのではないかとも思った。

 1月末には信子は泊りを希望するようなメールを送ってきた。大分逡巡したが、博樹は自分のホテルを教えて都合が良いなら予約するよう伝えた。しかし、信子は数日前になって、職場や家庭の事情で泊りは難しいと連絡してきた。少しがっかりしたが、むしろ安堵した気持ちの方が大きかったように思う。さらに会えるかどうかもわからないというようなメールまで来た。今になって、その時のメールを読むと、会いたい気もするが、会えなくても良いといった感じで、信子の逡巡する気持ちがよく表れていて感慨深い。結局会って夕食を食べることが決まったのは、2日前であった。

 日曜日の夕方6時、博樹が泊まるビジネスホテルのロビーで待ち合わせることにした。5時過ぎにホテルにつきシャワーを浴びると、6時ぴったりにエレベーターでロビーに降りた。小さなビジネスホテルで、ロビーといっても受け付けのまえにソファーが置いてあるだけである。エレベータのドアが開くと、ソファーに座りこっちを見ている女性がいた。信子であることに間違いなかった。

 食事はお互い緊張していたが、ぎこちないながらも何とか会話も途切れずに進んだ。信子の印象は一言で言えば「地味」であった。化粧は薄く、決して美人ではないし、博樹の好みではないややぽっちゃりとした体形である。服装もあか抜けないし、髪型も田舎っぽい。声はやや低く、のんびりとした口調でしゃべる。都会的な女性の華やかな感じとは無縁であった。しかし、正面から見ると、顔そのものは整っており許容範囲という気がした。この女を抱くことになるのだろうかと思うと、体が熱くなる気がした。店を出て仙台駅まで信子を送っていく。2月の仙台の夜は寒い。何気なく、信子の手を握ると、恥ずかしがったが嫌がることはなかった。そのまま手をつないで仙台駅まで歩いてゆき改札の前で別れようとすると、信子は「食事中、目を合わせてくれなかったので、ハズレだな、って思ってるのかと思ったけど、手を繋いでくれたので合格点をもらえたのかな」と笑顔で言った。この夜、目を合わせなかったことについて、博樹は意識はしてなかったが、この後から信子に限らずなるべく目を合わして話すようになった。次の日本出張は5月になりそうだと話したが、その夜のメールには「また、5月、お待ちしています」とあった。信子との関係が続いていくのだなと、このメールを見て博樹は思った。


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