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【大人 恋愛小説】

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出会い-1

 信子と初めてチャットで話したのは2年前の8月末である。話した内容はあまりよく覚えていないが、アドレスを交換した。すぐに1日に2,3通の密度の濃いメール交換が始まった。信子はメールが好きなようである。博樹のそれまでの経験では、こういう密度の濃いメール交換は最初だけで、続かないことが多い。どうせ、すぐ飽きるだろうと博樹はあまり期待していなかったが、2,3日して、信子が原発で避難していたことやそのことへの思いを書いてきて、博樹がこれに真面目に返信してから2人の関係は変わっていったように思えた。

 信子は、夫とはすっかり冷めていると言っていた。原因は夫の浮気である。信子の家は福島であるが、2011年の3月11日、地震で混乱を極めた。そんな中、夫は浮気相手からメールを携帯に表示したまま放置していたらしい。そのメールを見た信子は夫の浮気を知った。その後すぐに、信子は子供を連れて実家のある愛知県に数年間避難した。放射線を避けることが理由であるが、浮気した夫から離れたかったおともあるのだろう。2011年3月11日、地震とそれに伴う原発の事故、そして夫の浮気の発覚によって、信子の人生は大きく変わった。信子と博樹が出会ったのは、信子が避難先の愛知県から福島に戻ってきて半年ほど経った頃である。

男女の営みを想わせるような会話をしたのは、2回目か3回目かのチャットであろうか。博樹は熱くなった体を一緒に収めることを誘ったが、信子は、それは会ったときに、とい言って断った。会うつもりがあるのだろうか?博樹には会うことへの期待が芽生えてきた。

 9月半ばになってメールはOutlookからYahooメールに移行し、10月ぐらいまでは1日1通か2通のメールを交換していた。11月になると数日に1通のこともありやや間隔があいてきたが、安定したメール交換が続いた。初めて電話をしたのはこの頃だろうか。無口な博樹は電話は苦手で緊張したが、電話後のメールで信子は印象が良かったことを伝えてきて、安堵したのを覚えている。女性に対して自信のない博樹にとって、感じたままの気持ちを伝えてくる信子は、付き合いやすい相手であった。翌年の正月明けのメールには、出来れば会ってもらえたらとても嬉しい、という言葉があった。2月に仙台に出張することが決まり、会ってみようか提案することを心に決めたのはこの頃である。


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