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【大人 恋愛小説】

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メール-1

「突然のメールで申し訳ありませんが信子の夫です。本人の意向を聞かずに送っておりますのでこちらから連絡があったことは言わない方向でお願いします。信子は先月25日に脳梗塞で倒れて現在入院中です。最近は大分回復してきてスマホも開けるようになりましたが、文字の入力はまだ難しく、文章も認識できているかどうかわかりません。スマホを復旧した際にメールがあったので代わりに送ります」


 「はじめまして」というタイトルのこのメールを受け取ったのは、10月末の金曜日、東京の本社で打ち合わせを行い、その後、関係者と軽く飲んでからホテルに戻った時だった。いつものように、OutlookのメールとSkypeを確認し、その後、Yahooのメールを確認する。OutlookにもYahooにも、普段は広告しか来ない。「はじめまして」というタイトルにはっとして本文を見ると、すぐに信子の夫という文字が目に入った。全部読むのに1秒もかからなかったような気がする。その瞬間、このひと月の間考え続けた大きな謎が全て氷解した。最初に感じたのは謎が解けたという爽快感、そして振られたのではなかったという安心感が続いた。しかし、それはすぐに脳梗塞で入院中という重い現実に覆われ、その夜は朝まで眠れなかった。



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