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命の既読アイコン
【大人 恋愛小説】

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メール-3

 10月の第2週はオフィスで仕事をしていたが、信子のことが気になって仕方がない。電話してみようか? 携帯の電話番号は知っている。可能性は低いが、携帯が壊れて全ての連絡先がわからなくなっている可能性も考えられないことはない。電話するとしたら、信子の夫が仕事に出ている日本時間の土曜日がいいだろう。金曜日の夕方まで連絡がなければ、電話してみようと心に決めた。そして、現地時間で金曜日の夕方、日本時間の土曜日の朝8時に緊張しながらSkypeから信子の携帯に電話してみる。呼び出し音が鳴り続けて切れた。1時間後にもう一度電話してみたが、同じように呼び出し音が鳴り続けて切れた。

 日曜日からシアトルに出張した。現地時間で日曜日の夕方、ミーティングを終えてホテルに戻り、もう一度電話してみる。日本時間で月曜の朝8時、通常勤務であれば出勤前に保育所の駐車場にいるタイミング、いつも話していた二人にとって約束の時間である。この時間に電話があれば、博樹からと思うだろう。あまり期待してなかったが、やはり呼び出し音が鳴り続けるだけであった。携帯が壊れた可能性はなくなったと思った。

 その週は、呼び出し音が鳴るということについてずっと考えていた。生きているのだろうか。もし亡くなっているのであれば、携帯は電源が切れて呼び出し音は鳴らないだろう。関係を断ちたいのであれば、呼び出し音が鳴った時点で着信拒否をするのではないだろうか。それまでは振られた確率が高いのではないがと思っていたが、徐々にそうではなくて何らかの理由で携帯を使えない状況に陥ってるのではないかという気持ちが大きくなってきた。

 その週の金曜日オフィスに戻り、ふと思いついてオフィスのディスクトップのPCでSkypeに接続してみた。普段自分のPCからは、プライベートモードのWebから信子用のアカウントのSkypeにログインしていたが、ディスクトップのアプリであれば最近は既読アイコンがつくことを思い出したからである。Skypeを立ち上げて信子用のアカウントでログインしてみる。すると、最後のメッセージまで既読アイコンが付いた。見ているのか?何か一歩前に進んだような気がした。少なくとも生きているのではないか、そんな思いが強くなった。

 10月の3週目はバンコクに出張だった。PCのSkypeアプリを更新すると、こちらでも既読アイコンを確認できるようになった。試しにいくつかメッセージを送ってみたが、1日後ぐらいまでには既読が付くことがわかった。何があったのだろうか。職場に電話してみるか、もしくは家に行ってみようかと考えた。その週の後半は日本に出張であり、土日は動くことができる。家を訪ねるつもりはなかったが、レンタカーでも借りて家が見える場所に駐車して1日観察してみようかと思った。普通に家から出入りしていれば、振られたという事であろう。何らかの業者の振りでもして、職場に電話して呼び出してみることも考えた。亡くなった、もしくは病気で倒れているのであれば、電話に出れない理由を説明するのではないかと思った。いつものように働いていて呼び出してくれるようであれば、そのまま切ろうと思った。それは振られたという事である。

 日本についたのは木曜日の朝だった。金曜日になっても、職場に電話をするか、福島まで出かけてみるか迷っていた。出かけるなら、土曜か日曜、電話するなら土曜の朝か日曜の朝か。そんなことを考えているうちに金曜日の夕方になって、そしてメールが届いた。


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