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【大人 恋愛小説】

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メール-2

 信子と博樹はいわゆるW不倫であり、チャットで知り合ってから2年、初めて会ってからは1年半が過ぎていた。日本とアメリカという遠距離ではあり、会った回数は数えるほどであるが、ほぼ毎日のようにSkypeで話をする関係であった。話といっても無口な2人は電話ではなくメッセージのことがほとんどであったが。

 信子と最後にSkypeで話をしたのは、9月末の博樹が住むアメリカの現地時間で金曜日の午後だった。日曜日から現場で出張の予定であり慌ただしかったが、いつもよりやや長い時間、話をしていたように思う。信子はその日は土曜日で仕事は休みだが、学校の行事で出かけると話していた。土曜日、日曜日とメッセージはなかったが、特に気にもしなかった。お互いが家庭に入る週末にメッセージがないのはよくあることである。月曜日の夜、ロサンゼルスに着き、無事にロサンゼルスについたことや、週末に日本を通過した台風はどうだったか?などのメッセージを送ったが返事がない。少し気になったが、今度の週末の運動会を前にして忙しいのだろうと大して気にもしなかった。しかし、火曜日になっても水曜日になってもメッセージがない。ちょっと気になったが博樹も夜間の現場で忙しいこともあり、その時点ではまだあまり深刻には考えていなかった。携帯が壊れて数日連絡が途絶えたことは前にもあった。運動会の準備で忙しいだろうし、ネカフェに行く時間もないのかもしれない。念のために、信子と出会ったチャットの待ち合わせルームに、信子待ちのメッセージで部屋を作ってみる。あまり期待していなかったが、やはり信子は来ない。土曜日は運動会で忙しいから、携帯を直すのであれば日本時間の日曜日だろう。そう思って、現地時間の土曜日は信子からのメッセージを期待していた。しかし、日曜日になっても月曜日になってもメッセージはない。さすがに、これはおかしいと思った。

 振られたのか? 最初に考えたのはもちろんそのことだった。これまでの経験でも、女性が男性を振るのは突然のことが多い。しかし、それでもある程度付き合っていれば別れの挨拶はあるものだった。まして、真面目な信子の性格から考えて、突然何の挨拶もなく振ることは考えにくい。

 夫にばれた? しかし、その場合でも、メッセージは送れるだろう。これまでの信子との関係、そして信子と夫の関係を考えると、夫が信子のメールを見て激高し、信子が博樹との関係を断つことを決めることは考えにくい。たとえそうだとしても、その連絡はあるだろう。それに、何らかの理由で関係を断ちたいのであれば、アカウントを削除するだろうと思った。

 何かの事故か病気か? 信子が住む福島関係のニュースや警察のホームページを調べたが、9月末にニュースになるような事件や事故、それに大きな交通事故もなかったようだ。自分のこれまでの人生を振り返り、突然死した知り合いの数を思い出しても、ごくわずかである。そんな稀なことが、自分のごく親しい知り合いに起こるだろうか。確かに信子は職場や夫との関係でいろいろ苦労していたが、精神的には落ち着いているように博樹は感じていた。いきなり自殺するとも思えない。


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