投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

こいびとは小学2年生の最初へ こいびとは小学2年生 207 こいびとは小学2年生 209 こいびとは小学2年生の最後へ

搭乗口のHUG-3


 涙声。それでもしのちゃんは必死に、泣き出すのをこらえている。18歳も年上の俺がここで泣き出したらみっともない。
 しのちゃんの身体からそっと腕を離し、ゆっくりと立ち上がる。よろしくお願いします。そう言おうとして柚希ちゃんの顔を見たら、柚希ちゃんの両目が真っ赤になっていて、しのちゃんと同じように唇をぎゅ、と結んで立っている。しのちゃんの頭にそっと手を置いたさおりさんの両目も心なしか潤んで見える。
 ジャンプシートの前、客席最前列の、さくら色のモケットのシートに二人が並んで座る。きゅ、と唇を閉じて俺を見つめるしのちゃんに、精一杯の笑顔を見せ、しのちゃんのキッズリュックを座席上のハットラックに収納してL1に戻ってきた柚希ちゃんに合図してドアクローズする。ドアが閉まり、ドアモードをオートマチックに切り替えた柚希ちゃんが、ドアの小窓越しになにかを言ったように、「せんぱい、まかせてください」と口が動いたように見えた。
 こぼれ落ちそうな涙を必死でこらえ、タラップを下り、車止めを外して呼子で誘導する。タラップ車が機体から離れ、ほぼ同時にプッシュバックアプルーブ(許可)が出て737-800が平行誘導路へとゆっくり移動を開始する。尾翼の方向舵や昇降舵の動きをチェックしながら、機体が滑走路端へ向けて走行していく。他のトラフィック(航空機)はいないし風も天候も問題ない。離陸許可はたぶん誘導路走行中に出るだろう。
 滑走路の北側、機種が南南西を向く側に進入した737-800は、機体の右側、しのちゃん達が座っている側をこちらに向けていったん停止した。あれ、いつもならローリングテイクオフ(滑走路端に進入と同時にエンジン出力を上げて、停止せずにそのまま滑走を開始する離陸方法)していくのに。
 俺が立っているエプロンから50mほど離れた滑走路上で、737-800のスラストレバー(エンジン出力を調整するレバー)がゆっくりと入り、徐々にエンジンの回転数を上げていく。機体が軽く震えているのが見える。あの、コックピットから数えて三番目の窓。あの窓の向こうにしのちゃんが座っている。窓際、1Kの座席から、エプロンに立っているさくら色のポロシャツを着た俺の姿は見えているだろうか。
 エンジンスタビライ(安定)。F/O(副操縦士)がTOGA(Take off and Go around。離陸する際のエンジン出力を自動調整するボタン。操作すると、スラストレバーが自動的に離陸推力位置まで作動する)を押し、CAP(機長)がブレーキを解除する。70人のPAXとコックピット・客室合わせて四人の乗務員を乗せたさくら色の737-800が離陸滑走を開始する。俺の正面、取付誘導路との交差地点を737-800がぐんぐん速度を上げジェットエンジンの轟音を響かせながら通過していく。窓の向こうのしのちゃんと目が合ったと信じたい。v1(離陸決心速度)に達し、CAPが操縦桿を引き機首が上がってさくら色の機体が、しのちゃんが、ゆっくりと上空へと羽ばたく。ギアアップ(車輪格納)してさらに上昇し、雲の少ない南の空へと小さくなっていく。俺の背後でタラップ車のドアが閉まり、支店長が俺に「おつかれー」と、いつもの呑気なねぎらいの声をかけてターミナルに戻っていく。頬を撫ぜる風。たそがれが近づく空。俺は737-800のエンジン音が南南西の空の彼方に消え去っていってもしばらくの間、エプロンに立ち尽くしていた。



 さすがにあたし今日はまっすぐ帰るわ、生理終わったら飲みに行こうねー。そうあっけらかんと言って空港駅に向かった琴美の後ろ姿を見送る。ほっとしている自分がいた。できれば琴美と飲みに行って、胸の虚空をアルコールの力で埋めたかった。でもそれは酔った勢いでしのちゃんとのことを琴美に話すことになりかねないし、琴美がどういう反応を示すか予期できなく俺の心の準備もできていない段階ではリスキーでもある。同僚の男がエロトーク好き、までは許容してくれても、ペドフィリアで小学2年生の「こいびと」がいてその「こいびと」とキスやペッティング(俺的には「セックス」だけど)まで進んでいると聞いたら、まあ普通なら「引く」では済まないだろうし。
 だから琴美が体調不良でかっきり定時で上がってくれたのは、ある意味ではラッキーでもあった。俺も早々に残務を片付け、琴美よりも一本遅い各駅停車に乗って、しのちゃんが選んでくれたゼンハイザーの完全ワイヤレスイヤホンを両耳に突っ込む。今日は充電切れもなく、すっごく久しぶりに聞くカニエ・ウエストもせっちゃんもXTCも快調にドライバユニットを鳴らしている。心は晴れないけれど。
 改札口を出て小さなロータリーを回る。街はまだ暗くなりきっていない。陽が長くなったな。やがてしのちゃんが通っていた通学路との交差点を通りかかる。いつだったっけ、帰る途中にここで、小学校で雨宿りしていて帰宅が遅くなったしのちゃんとばったり出会ったのは。
 歩道橋を渡り、ちょっとためらってから、さおりさんとしのちゃんが住んでいたアパートへ向かう。いつもの路地、いつもの佇まい。しのちゃんが俺に「お守り」をくれた、あの角。はじめてしのちゃんを抱きしめたあの日。あれから半年ちょっと、か。もっと長かったような気もする。


こいびとは小学2年生の最初へ こいびとは小学2年生 207 こいびとは小学2年生 209 こいびとは小学2年生の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前