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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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さよなら-5


「寝ちゃった」

 さおりさんの声は冗談めいていたけれど、どうやら俺は無意識に大きくため息をついていたらしい。

「がっかりした?まあ、そうだよね。『お兄ちゃん、きっとお仕事が忙しんだよ』って言ったら、『ふうん』とだけ返事して、一人でお風呂入って、明日の支度をして寝ちゃった。小学生はもう寝る時間なんだ、ごめんねお兄ちゃん」

「いえ、俺が悪いんです、ゆうべも電話すっぽかして……」

「ふふ、まあ、大丈夫だよ。明日はよろしくね」

 明日は朝一番で市場へ仕入れに行く、と言うさおりさんと簡単に近況を話しあって通話を切った。ホーム画面の時計は十時半。今日はもうこのまま寝て明日に備えよう。体内時計を日常に戻して、さっさと仕事から帰って、とっとと夕飯を食って、そしてしのちゃんとのビデオ会話に備えよう。
 そう決意すると案外身体は脳内の意思に反応してくれるもので、あれだけ長い昼寝 ―夕寝?― をしたにもかかわらずことん、と眠りにつけたし、朝もいつもの時間に目覚めたし、仕事もさほど忙しくもなく順調に定時で上がれた。まあ今日は麻衣ちゃんも琴美も休みの日だったから雑念が入らなかったっていうのもある。
 食いすぎると眠くなる。戒めとして野菜多め・でも量少なめの夕飯にし、ビールも飲まずにしのちゃんからの着信を待つ。おとといも昨日も八時半くらいに着信があったから、今日もその頃だろう。スマホのサイレントモードを解除し、小さめの音でテレビを点けてなつかしの平成ソング特集を見ながらスマホがビデオ通話着信音を鳴らすのを待つ。スピッツ、コブクロ、レミオロメン、福山。小学校の頃、いまのしのちゃんくらいの年齢の頃にヒットしていた曲がメドレーで流れる。次にしのちゃんとカラオケ行ったら、この辺の曲、俺の懐かしの曲特集で縛るかな。
 番組が終わりかけても着信はない。あれ、これって俺のほうから電話したほうがいいってことかな。しのちゃん、二日連続ですっぽかされたからご機嫌ななめなんだろうか。まあ仕方ない悪いのは俺だ。けど、ちょっとツンデレ気味なところもあるからなしのちゃん、そういうところもかわいいんだけど。ニヤニヤしながら電話をかける。
 ちょっと長めに呼び出し音が続いてから、さおりさんの声で電話がつながる。

「あ、はい……お兄ちゃん」

「もしもし?こんばんは、いま大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だけど……」

 声の様子がちょっと違う。

「しの、どうしたのお兄ちゃんだよ……しの」

「……しのちゃん、どうかしたんですか?」

「ううん、さっきまではいつもどおりだったんだけど……お兄ちゃんから電話だよ、って言ったらむこうのテーブルに行っちゃって」

 お店にいるのか。けど、俺からとわかって向こうに行くっていうのは。

「しの、お話しないの?」

 カタカタ、とスマホがなにかに軽く当たる音がして、「さおりさん」と表示されていた画面にレストランの壁とソファーシートの赤い背もたれが映る。ほら、しの、と画面外からさおりさんの声がして、画面右からしのちゃんが現れてソファーシートにちょこんと座る。

「しのちゃん?ごめんね昨日は、あ、おとといも」

 俺もスマホをテーブルの卓面に立てかけ、画面に向かって冗談めかして言う。しのちゃんがぷんすか、とむくれて……ないな。でもなんだか表情が暗い。

「どうしたのしのちゃん?身体の具合悪いのもしかして?」

「……いいえ」

 ぼそり、と、視線を微妙に逸らしてしのちゃんがつぶやく。

「あ、ああ……その、しのちゃん、ほんとにごめんね、俺……」

 おどけた口調を続ける雰囲気ではない。しのちゃん、マジで怒ってるのかな。

「その、つい寝ちゃっててさ。しのちゃんに電話しなきゃとは思ってたんだけど……」

「……いいです。だいじょうぶ」

 スマホの画面に映るしのちゃんの表情は硬い。俺の言葉を遮るような返事のあと、無言が続く。マイク越しに店内のざわめきが伝わる。繁盛しているお店の、食事中のお客さんの楽しそうな声。誰かが弾いている三線と女性ボーカルの島唄。その、陽気な喧騒としのちゃんの硬く沈んだ表情とのアンバランスなコントラストが、俺の不安感を掻き立てる。
 怒っているのか、それとも、久しぶりのビデオ通話でちょっと緊張しているのか。俺は、しのちゃんが答えやすそうな、宮古島の小学校のクラスのことや毎日の食事のことや真奈ちゃん ―柚希ちゃんの小4の妹だ― のことを振ってみた。けど、しのちゃんからの返事は短い「はい」「いいえ」だけで、その表情も硬いままだ。
 かなりマジで怒っているのか。いや、もしかしてしのちゃんは眠いんじゃないか。ゆうべさおりさんに折り返した時刻ほどじゃないにせよ、今の時間も小3にはやや遅めの時間だ。次の土日休みのときに改めてご機嫌取ることにするか。

「あ、じゃあ……しのちゃん、もし眠かったら、今日は終わりにして、また、今度」

 こういうときにスマートな電話の切り方ができないのがコミュ障たる由縁だ。ちら、と怪訝そうな目線をカメラに軽く向けたしのちゃんは、それでもやはり沈んだ口調で

「はい……」

とだけ応える。

「うん、じゃ、また」

 画面のしのちゃんに向かって、胸の前で手を振る。しのちゃんからの反応は、ない。両手を(たぶん)膝の上に置き、まるでつまらない授業を受けているときのような、感情の消えた顔で斜め左のほうに目線を向けている。
 その目線が、ちら、とカメラを向いた。そして、しのちゃんの口が、実際にはせわしなく、けれど俺の耳にはスローモーションのようにゆっくりと、動いた。

「さよなら」


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