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白い悪魔
【ファンタジー 官能小説】

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白い悪魔-10

「まずはそのお腹の怪我を治しましょう」アッチが話題を変えます。
「ほっといてくれこれぐらい大丈夫だ」
「分かりました。では血管を収縮させて出血を抑えましょう。この後すぐに医者を呼ぶんですよ」
「そうしましょう」青年はなぜかホッとしたようです。
「確かめる相手はもういません。 害をなす魔は倒せました。帰りましょう」
ナミは黙っていました。

ホテルへ荷物を取りにもどりました。
ナミは部屋を使っていません。あたしの助言で二人としてチェックインしたのは正解でした。
≪アッチはそのひとり分を、おこずかいとしてくれるような気分になってくれないかな≫ そこで、ふとおかしなことに気がつきます。
あたしの名探偵が、起死回生を図ろうと戻ってきました。
≪アッチは変な言い方をした。『害をなす魔は‥』って何≫
そういえば、お兄さんの魔はどこへ行ったのでしょう。
でも、青年をテーブルナイフで襲った魔は、お兄さんのかたきを取ろうとしていました。
ひょっとしたらそいつは兄のメイドに巣食う魔だったのかもしれません。
そういえば町であの子に会った時、あの魔は、私の中に魔がいることは知っていたはずです。あんなに驚くのもおかしな話です。
一番単純な解答は、最初ナミに撃たれて小ナミが倒れたとき、兄の魔に入れ違いに体を乗っ取られたという可能性です。
そこで初めて兄の死のことを聞いて、青年に復讐しようとしたのです。
そうだとしたら弟のほうの魔はどこへ行ったのでしょう、あれはまだ死んではいないはずです。
ということは、今頃、息を吹き返した弟の魔が、あの体に戻っているのかもしれません。
だからあの青年も、刺されているのに大丈夫だと言ったのでしょう。
お人形ではありません。まだ処女の小さなナミが、あの青年と普通に暮らしていることを想像すると、ちょっと面白くなってきました。
こんないいネタ、いつか使えるかもしれません、黙っておきます。名探偵は全てを解き明かしますが、すべては語りません。

しかし、あんなに暴れたのです。やっぱり今回も逆さづりにされました。
リビングでさかさになって、裸の体にメープルシロップをたらされながら、考えます。
≪なぜ魔は、弟を殺す真似をしたのか≫ 名探偵が自信満々で頭をもたげます。
実は、かたき討ちということに引っ掛かっていました。
小ナミは新しい体で部屋へ上がってきたとき、ぎこちない動きで、息ぎれしていました。
来るのにずいぶん力を使ったのでしょう、筋肉にエネルギーはほとんど残っていなかったのかもしれません。
きっと狭い繭の中ではたいして筋肉はきたえられないでしょう。それを産まれた途端、急に動かすのだから無理が来ます。
サバンナの草食動物とは違います。人間は産まれて少しで走りまわったりはできません。
小ナミに抱きついた時、あの子はあたしを振りほどくこともできませんでした。震えていたのも気持ちから来るものではなかったのかもしれません。
≪なのに、なぜあのタイミングで弟にナイフを向けたのか。主人が死んだとわかったから?
それならもっとチャンスを待てばいい。 魔としての力を使うとナミにやられるというのなら、チャンスを待てばいい≫
「あの魔は、自分を終わらせたかったんじゃないかな」つぶやきます。本当は小ナミもろとも死ぬ気じゃなかったのかと思います。
ナミは何も言いません。
あの二人の魔は、他の魔とは違う気がします。命令で動くのですが、命令だけで動いているのではない気もしました。
「ねえ、警察で何か聞かなかったの」
「さあな」
「あたしにも報告して」
『報告は、何も足さず、何も引かない』嫌というほど訓練されています。どんなささいなことが重要になるかわからないのです。
ナミは渋い顔でしゃべり始めました。


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