藁の匂いに惹かれて第2話-6
―――――――もうすぐ日が沈もうとしていた。
「・・・・行こうか」
「・・・・どこへ?」
ウィンセントの呟きに、ティファは思わずウィンセントの顔を見た。
本来ならば「帰ろうか」というべきところを「行こうか」と言ったウィンセントの言葉を、脳裏に疑問すら浮かぶことなく自然と受け止めていた。
もしかしたら、かつて愛を交わしたウィンセントの住む小屋か。
それとも全く別の場所なのか―――――――
ウィンセントはそれに答えず、無言でバイクに跨がりキーを回した。
―――ドルン、ドルルルル・・・・
「・・・・・・・」
黙って背を向けたままのウィンセントに対して、それ以上の言葉はいらないと思った。
ティファも無言のままバイクに跨がり、ウィンセントの背中に身体を押し付け両手を回す。
バイクが動き始め、ゆっくりとその場を離れた。
―――――――バイクが目的地についた時、既に日は沈んで辺りには夜の帳が降りようとしていた。
「ここは・・・・」
「神羅カンパニーが所有していた別荘地域の中で、
唯一機能していると言える地域だ。
以前この辺りを巡っていた時、目星をつけておいた。
ここならゆっくりティファを抱ける」
そう言いながらバイクを降りたウィンセントがくるりと向きを変え、
目の前のティファの顔をまっすぐ見つめてきた。
ウィンセントがはっきりと“ティファを抱く"と口に出したのはこれが初めてだった。
前回は成り行きというか、その場の雰囲気に流されてしまった面もあるが、
今回は違う。
1人の男として、
ウィンセントがティファを1人の女として求めたのだ。
「ウィンセント・・・・」
ティファの口から男の名前が零れ出る。
足から地面に根を下ろしたかのようにティファはその場から動けなかった。
それは戸惑いでも拒絶でもない、ある意味“遠回しの受諾"の意思表示――――