藁の匂いに惹かれて第1話-1
【はじめに】
本作品はFF7のティファが主人公となる2次創作です。
今回はウィンセントがお相手となります。
時間軸はAC(アドベントチルドレン)のエンディング直後。ミッドガル郊外が舞台です。
これより本編です。
****************
****************
「・・・じゃあ行ってくるからね。留守番よろしく 」
「うん、ティファも気をつけてね・・・・・」
「分かってる、それじゃあね」
そう言い残し、ティファはバスケットを左手に下げて店を出た。バスケットの中身はティファがその日の朝に作ったサンドイッチやベーコン等。
マリンに見送られて、ティファは灰色の雲が出始めた空の下、ある方向にむけて歩き始めた。彼女が目指すは街の郊外――――――――――
―――――カダージュ達との闘いが終わり、クラウドがティファ達の元に帰ってきてから今日で1週間になろうとしている。
バハムートの破壊の跡の復旧が進む中で、ティファは各地から集まってきてくれた仲間達に感謝とねぎらいの言葉をかけていった。
皆一様に笑顔を向けてくれ、それぞれ彼ら自身の帰るべき場所に戻っていったが一人だけミッドガルに留まると言う人物がいた。
ウィンセント・バレンタイン。
不死の体を持った黒髪の、赤き瞳の持ち主―――――――――
『うちに来る?1部屋くらいなら空けられるけど・・・』
『・・・いや、遠慮しておく。折角クラウドと寄りを戻したばかりなんだ。私がいるとむしろ邪魔になる。
私には今居る藁小屋くらいがちょうどいい・・・』
そう言い残してゆっくりと立ち去っていったウィンセントの後ろ姿を、ティファは忘れることができなかった。
マリンの話で、彼がマリンやクラウドを亡びの都でカダージュの攻撃から助け出したことも 知る。
そのせいか、ティファはウィンセントの境遇に何か同情以上の感情を感じることになった。
そして お礼の意味も込めて、ティファ手作りの料理をウィンセントに差し入れてやろうと思い付いたわけである。
街を出た辺りから 空の色が灰色から黒色に変わりつつあった。
やがてくるかもしれない雨を予感しつつ、ティファは足早に彼のいるであろう小屋に向かって歩を進めた。
艶やかな黒髪をたなびかせて――――