藁の匂いに惹かれて第2話-3
「突然だがマリン、これからティファを借りていいか?」
ここでウィンセントは視線をティファからマリンに移して問いかける。
「えっ・・・・ウィンセントとティファ、どこかに行くの?」
驚き気味のマリンにウィンセントはフッと笑う。
「この前弁当を差し入れてくれたお礼に素晴らしい景色が見える場所に連れていきたい。
今からバイクで行けばすぐに着けると思う」
そう言いながら、ウィンセントは再び視線をティファへと戻る。
改めて赤い瞳が妖しい光を帯びてティファを見据えてくる。
その妖しい光にティファは視線を動かすことも、
身体を動かすこともできなくなっていた。
ティファの心に去来するのは、
あの雨の日の小屋での出来事。
そして気づけば、ウィンセントの体から懐かしい香りが微かに漂ってきているようだ。
ティファの記憶が甦ってくる。
今の今まで心の中で燻っていた欲望の火種が、より大きな炎へとその姿を明らかな形に変わろうとしていた―――――
「・・・マリン、ちょっと店の方任せていいかな。
今日はデンゼルも早く帰ってくるだろうか、お留守番もお願いね。」
「え〜〜、結局ウィンセントと出掛けちゃうの?」
「大丈夫よ、遅くなりそうだったら電話するし。今度必ず埋め合わせするから」
「・・・仕方ないなぁ。ウィンセントも余り変な場所にティファを連れていかないでね」
「ああ、分かっている」