藁の匂いに惹かれて第2話-2
その時、
―――――――――ドルン・・・ドルン、ドルルル・・・・
突然店の前から聞こえてくる低い爆音。どうやら店の前に一台バイクが止まったようだ。
「バイク・・・ねえ、ティファ。クラウドが予定より早く帰ってきたのかな?」
「・・・いいえ、違うわマリン。似ているけどクラウドのバイクじゃない」
「うーん、じゃあ誰だろう。お客さんかな」
視線を宙に漂わせて首を捻るマリンに苦笑しつつ、
ティファはバイクのエンジンをかけたまま、ドアの向こう側に立つ人物の方に目を向ける。
だが、扉を開けて中に入ってきた人物はティファやマリンの予想を越えた人物だった。
「久しぶりだな。ティファ、マリン」
「ウィンセント?!」
「うわ〜、かっこいい〜〜。何だか雰囲気違うね」
2人が驚くのも無理はない。
この時のウィンセントの装いは、普段の特徴的なものとは完全に真逆のものであったからだ。
長い黒髪を頭の後ろで1つに束ね、髪型はオールバック。
首にはトレードマークになっている銀色のゲルベロスのペンダントが健在。
いつも身に付けている赤い独特のマントから、
白いワイシャツ1枚で両袖をまくりあげ、
青いジーンズをぴっちりと履いている。
そして手にはバイク運転時に使っていたのだろう、 灰色の専用ゴーグルが握られていた。
今までのウィンセントのイメージを一新した、
文字通りラフな格好であった。
「な、何でそんな格好にしてるの?」
「美人をお誘いするには、こういう格好の方がいいと以前バレットやユフィが言ってたのを思い出してな・・・。もっとも少しこそばゆい気がしないでもないが」
「ううん、そんなことない。ウィンセントっていつも格好良いけど、今日はもっと格好良いよ!!
・・・ねえ、ティファもそう思うよね!?」
「そ、そうね・・・・」
予想を越えた大人の男の姿にどぎまぎしつつも、
ティファは先程ウィンセントが口にした“美人へのお誘い"という言葉が気になった。