藁の匂いに惹かれて第1話-6
「・・・この雨では店に帰ることもできんだろう・・・」
外の雨の様子に対して、ウィンセントはそう囁いてきた。
もうすでに彼の口許はティファの左耳元に寄せられている。
他人が見れば明らかに誘っている、と取りかねないウィンセントの行動。
ティファ自身もそう取りつつあった。
いつもの彼女なら相手を突き放すくらいの強気な行動を示すはずなのに、今日この場ではそれができない。
ウィンセントの低い囁きと室内に漂う湿った藁の香りに惑わされてしまっているのか。
(・・・わ、私がここに来たのは、ウィンセントにお弁当を持ってきてあげる。ただそれだけ・・・)
思わず目を瞑るティファ。
そんな彼女の想いを知ってか知らずか、ウィンセントは彼女の艶やかな黒髪に唇を近づけてくる。
彼女の頬に彼の長い前髪が微かに触れてきた。
「・・・本当にティファには感謝している・・・ 」
そう囁きながら 彼女の黒髪にチュッと口付ける。ウィンセントはそのまま長い彼女の髪をかき分け、ゆっくりと迫ってきた。
(駄目・・・・・これ以上はっ!! )
心の中で声なき声を発するティファ。
自分にはクラウドが、などという“言い訳"も既に無力なものと化していた。
ウィンセントのこの場での突飛な行動の是非を問うより先に、ティファ自身の理性が先に崩れていく。
「ああ・・・・・・」
目の前が真っ暗になり耐えきれなくなったティファの口から甘い喘ぎが漏れる。そのままウィンセントの首元に両手を回し自ら顔を埋めてきた。
――――――――ザアァァァ・・・・・
雨は更に激しさを見せ、
小屋の中の藁の匂いが更に濃くなる。
辺りを再び静寂が支配した―――――――