藁の匂いに惹かれて第1話-4
出会った頃は無愛想で、冷静な思考故に自らの感情をなかなか表に出すことはなかったウィンセント。
今ティファの目の前にいる彼を見ていると、今までの付き合いのことも踏まえ、自分がそれだけ心を許してくれる存在になったんだなということを実感させられる。
そしてクスリと笑うティファを意識してか、ウィンセントの視線は未だに天井に向いていた。
――――――ポッ・・・ポッ・・・ポポッ・・・
「 あ・・・ 」
不意に室内に響き始めた 雨粒が壁に当たる音。ティファとウィンセントは思わず窓の外を見た。
パシパシッと窓に当たる雨粒。
先程より更に薄暗くなった小屋の外。
当初のティファの予想異常に天候の変化は早かったようだ。
―――――サァァァァ・・・・・
窓の外から聞こえてくる雨の音の変化は、それが本降りになることを小屋の中の二人に暗黙のうちに告げるものだった。
「 ・・・・・ 」
「 ・・・雨が落ち着くまで ここにいるといい。無理して雨に打たれて 風邪を引くこともないだろう 」
「そう・・・ね・・・・」
ウィンセントの言葉と正面に向き直った彼の紅い瞳を正面に受けて、今度はティファの方が無意識にそっぽを向いてしまっていた。
心なしか頬がピンクに染まっている。
ティファの緊張感が先程より高まっていた理由。
それは雨の為に小屋の中にウィンセントと二人きり、という事態を再認識したこともそうなのだが、
一番の理由は、
湿気のためか先程より彼女の鼻をくすぐり始めた“藁の香り"だった――――――