藁の匂いに惹かれて第1話-3
「ウ、ウィンセント・・・・!!起きてるんだったら 返事くらいしてくれたって・・・ 」
「・・・・悪いが、今起きた。ティファの匂いのお陰でな」
「なっ・・・!!」
普段のウィンセントらしからぬ言葉に、ティファはからかわれたのかと赤面し思わずウィンセントを睨んだが、
彼の顔にそのような風情がないことに気付き、そのまま喉まで出かかった更なる非難の言葉を飲み込んだ。
彼の顔はいつもの青白く、かつ静かな風情のままであったから。
薄暗い室内に漂う静寂。
ウィンセントはゆっくりと上半身を起こすと、無言のままティファに側の藁の束を指差した。
ティファも彼の意を察してそこに腰を下ろす。
そのまま二人は先程よりも近い距離で向き合うことになった。
「・・・まさか ここにティファが来るとは思わなかった・・・ 」
ティファから視線を外し、うつ向き加減のまま いつもの物静かな声を発するウィンセント。
ティファにはその言葉の中に 若干の“照れ"の感じがあることに気付いた。もっとも、それは長年彼と共に戦ってきた彼女だから気付いたことで、常人では絶対に悟ることすらできない“感情の揺れ"であったが。
「マリンから聞いたの・・・ウィンセントがクラウドのピンチに駆けつけてくれたんでしょう?
それにバハムートが現れた時にもちゃんと来てくれたし・・・。
だから、その・・・せめてものお礼のつもりよ・・・・」
「・・・当然のことをしたまでだ。特に礼の必要はない・・・」
「そう・・・・・」
ティファは思わずウィンセントの顔を覗きこむ。それを察してウィンセントは思わず顔を上げ、視線を天井に向けた。紅い瞳が微かに揺れる。
明らかに照れ隠しのつもりだろう。
ティファは彼の仕草に思わず微笑んだ。