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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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歌うたいのバラッド-6


 恐る恐る、首と目線を左に回す。左腕の中の20キロ台の華奢な身体、その持ち主は俺の半身の背中に頭を押しつけて、くー、くー、と、小さな寝息をたてている。さんざん自分だけ歌って疲れたなさては。

「しのちゃん起きて」

 ぶすっとした声が出た。んだよ、俺の歌声をうっとりと聞いてくれているのかと思ったら。

「んん……」

 ぐずるような声を出してしのちゃんが目を覚まし、俺を見上げて、ふへへ、と笑う。ふへへじゃねえよまったく。

「さ、時間だから、帰るよ」

「んー、あたし、お腹すいた」

 ぱんぱん、と、俺の太腿を叩きながらしのちゃんがあっけらかんと言う。間違いなく俺の絶唱は聴いていなかったな。

「……なにが食べたい?」

「うーんとね、んー、オムレツ!あと、ハンバーグ!」

 眠いんだか腹減ってるんだかどっちなんだ。これだから子供ってのはわからん。でも、そこがたまらなくかわいい。
 ラウンドワンを出て、琴美と鉢合わせしないように気をつけながら打越駅から電車に乗って俺としのちゃんの住む街に戻る。駅前のファミレスでしのちゃんはスペイン風オムレツのプレート、俺はミックスグリルのハンバーグ抜き ―一瞬でしのちゃんに取られた。まあ最初からあげるつもりではいたけど― を、それぞれミニッツメイドとカフェオレをお供にいただく。さおりさんにメッセージアプリで、俺の渾身の斉藤和義の間寝てたんですよしのちゃん、と伝えると、たった一言「爆笑」とリプが帰ってきた。
 オムレツのプレートにハンバーグをしのちゃんは俺よりも早くぺろっ、と完食した。そりゃ二時間のうち一時間四十分はしのちゃんが歌ってたんだから、体力も消費したしお腹も空いただろう。いっぱい食べる君が好き、とかいうCMのフレーズがあったけど、「こいびと」がおいしそうにご飯を食べる様子は多幸感を生んでくれる。デートの醍醐味。これで渾身の斉藤和義をちゃんと聴いてくれていたら言うことなかったけど。

「ねえ、お兄ちゃん」

 俺が入れてきた二杯目のミニッツメイドを飲みながらしのちゃんが言った。

「ん?」

「さっきのお兄ちゃんのお歌、よかったよ」

 え。しのちゃん、ちゃんと聴いていてくれたんだ。

「そ、そう?うん、いい歌でしょ、俺、渾身の」

「すっごくよく寝れたー。ね、お兄ちゃんとこ泊まりに行ったら、また歌って」

 無邪気なしのちゃんの笑顔に返す言葉がなく固まる。それじゃバラッドじゃなくてララバイだよ。

「あたしも、もっといっぱいお歌覚えて、いっぱいお兄ちゃんに歌ってあげる」

 世界一かわいくて愛おしい存在は、時として残酷にもなる。まあいいか、この顛末さおりさんに話したら大笑いするんだろうな。しのちゃんと、その家族が笑ってくれるならそれでいいか。さおりさんも言っていた、しのちゃんと俺には、いつも笑っていてほしい、って。
 ごめんなさい、ちょっと遅くなります。さおりさんからメッセージが届く。OKです、と返信して、しのちゃんと席を立つ。ランドセルを取りにいったん俺のアパートに戻って、それからしのちゃんを家に送っていこう。そして、さおりさんが帰ってくるまでの間しのちゃんと愛し合おう。や、そんなに長い時間はないだろうから、抱き合ってキスして、しのちゃんの息臭と体臭を堪能しながらちょっとだけ8歳の身体を服の上から愛撫するくらいだけど、楽しいデートの締めはそれで十分だ。なんなら枕元で斉藤和義を甘く歌ってやる。ファミレスを出た俺としのちゃんは、帰宅する人もまばらになりかけた夜道を、寒いねー、と言い合いながら手をつないで歩いた。


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