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ノラ猫 
【ファンタジー 官能小説】

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ノラ猫-9

「準備をするよ。出るのは今晩だ」そう言い残して屋根裏から降りました。
さて、簡単に言ったものの、脱走にはそれなりの努力と、たくさんの幸運が必要です。まずは洗濯室から先生の服を盗むと、丸めて夜まで隠しておきます。
夜中にトイレへ行くかのように起き上がると、屋根裏部屋に上がりました。
マルはおれだとわかると飛びついてキスしてくれました。
「触らせてよ」
マルは仕方なさそうに少し胸を突き出させます。襟元から手を突っ込みました。生の乳房にさわり、乳首に触ります。
「さあもういいでしょ」手をどけさせました。「うまく逃げられたらね」
マルに先生の服を上からかぶせると、手をつないで階段を降りていきます。
ここまではうまくいきました。
≪もしぬけ出せたらおれはマルと、新しい自分を見つけられるかもしれない≫ 緊張で胸が痛くなってきます。
どこまでものびる、真っ暗な廊下を進みました。
と、明かりがつきます。室長と院長先生が立っていました。
「お前がそわそわしていたから、変だと思っていたんだ」シュウが鞭を振り下ろします。 「どこへ逃げようとしても、オレが見張ってる限り自由にできると思うな」おどします。
「たすけて」マルは叫ぶと、おれの手を振り払って院長の元へ走ります。
シュウはあわてるおれをにらみつけます。 「おっと、お前がどんなごまかしを言っても、オレが正してやるからな」へたなことを言うなとおどしているのです。
「ノラが私を触った後、一緒に逃げろと言ったんです」何度も鞭を振り下ろされるおれを見ながら、マルは胸を隠し、小さくなっていました。
「それくらいでいいでしょう。もう遅いです。明日にしましょう」おれたちはそれぞれ反省室に入れられました。少なくともおれは入れられました。
今度は強制労働にも出されませんでした。その間にマルの妊娠が発覚しました。
当然おれが怪しまれ、何度も股間に電気ショックの尋問を受けます。
おれはしゃべりません。 
その間にマルは別の施設へ移されていきました。
きっとおれを移したかったのでしょうが、おれなんかどこだって受け入れないでしょう。
シュウは、おれにマルを奪われたと思ったようです。
小さな声で「殺してやる」口癖のように言い、鞭をふるうきっかけを探しました。
そして二日ほど雨の降り続いた次の日のことです。
みんなは部屋に閉じこめられた後の晴れ間で、気持ちがはじけていました。
「おい、科学の実験をしたくはねえか」シュウがみんなに言います。
いつも鞭で脅されているのです、反対する者のいるはずがありません。
おれはみんなに取り囲まれて、外へ連れ出されます。そして用水路まで行くと手足を縛られました。
「こいつがマルをあんな風にしたんだ。本当の悪魔かどうかは、院にとっても、町にとっても重要なことだ」宣言します。
「本によると、水に浮いてくるのは悪魔だということだ。悪魔を嫌がる水が跳ねのけようとする結果だそうだ」
おれを見て、ひとりだけしゃがむと、耳元で「あんなすぐにできちまうなんてな、びっくりだ」何でも自由にしてきた、この男にも知らないことがあったようです。
「おまえ、マルとしたんだろ。あれはおまえのガキに違いねえよな」 シュウは立ち上がると、「さあみんな、好きにしな」
雨で増水した用水路はいつものゆったりした姿はなく、あふれそうに盛り上がった、見ているだけで吸い込まれそうな泥の流れです。 
そこに突き落とされました。 シュウはそれを離れたところで見ていました。
今までにも落とされたことは何度かありますが、増水もしていないし、縛られたこともありません。
どんどん流されていくおれを見て「浮いてる、浮いてる」と、はやしたてる声が聞こえて、遠ざかっていきます。
あとは泥色の泡と、そのはぜる低音の中をのたくって流されていきました。
幸運だったのは流されてきた何かにつかまることができて、水面に顔を出すことができたことです。

■オレは泥水を飲みながら叫んだ。 「なんで殴り飛ばして逃げない、なんでやつの子だと言わない。こんなオレなんか海まで流されて腐ってしまえ」
どこまでも流されていきながら、弱い俺をいっぴきずつひねりつぶしていった。
オレは裏街で生きると決めた。


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