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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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就職活動-1

 年末になり実家に帰った。新しい道ができていて、ほとんどの車はびゅんびゅんと走っていくが、駅から乗り継いだバスは昔どおりに、昔ながらの旧道をくねくねと走っていく。集落のバス停に着くと母が軽トラックで迎えに来てくれている。新道でつぶれた家の畑の補償金で、わたしは進学し、母は運転免許を取って軽トラックを買ったのだ。

 軽トラを買って間もない頃、助手席に乗って母の運転で町まで買い物に行ったことがある。立体駐車場しか空いていない。

 「あたしはここが苦手でなぁ」

 そうボヤキながら軽トラを何度もエンストさせながらどうにか停めていた。

 「お母ちゃん、よく免許取れたなあ」
 「まあ、検定は1度落ちただけでどうにかなったわ。ミサヨさんは2度落ちたんやで」

 そんな母も運転には慣れてきたようだ。わたしを助手席に乗せたところで、通りかかった近くのオジサンが声をかける。

 「おお、嬢ちゃんの出迎えか。車も重宝しとるのお?」
 「ええ、おかげさんで」
 「ギアがうまいこと入らん言うとったが、今日はすんなり入ったか?」
 「ああ、今日は調子ええよ。ちいと油が足りんかったのかもしれんのぉ」
 「おうおう、油いっぱいさしてやりゃあいっくらでも気張って走るわい」

 えも言われぬ中年の男女の会話を助手席で聞き流している。

 「お母ちゃん、車に油さしたりするんか?」
 「あはは、自転車じゃあるまいし。それ、発進」

 母がギアを入れて車を出そうとするがエンジン音がうなるだけ。ギアがちゃんと入っていなかったようだ。 

 家に着いて、母の手料理を食べ終わり、こたつでくつろぎながらテレビを見ている。

 「来年は就職活動の年か?」

 母がみかんの皮をむきながら尋ねてくる。

 「そうだね。もう4回生だから」
 「どうするつもりや?」
 「そうねぇ…。就職部の先生に相談でもしてみようかと思ってるけど?」

 都会暮らしにも慣れはしたけど、親と同居していない一人暮らしの女子学生は企業からあまり歓迎されないと聞いたことがある。だから、実家にまでは戻らなくても、都会は引き払ってこようかとも思うが、正直、なにも考えていない。『先生』というガラでもないと思っていたから教員免許を取ろうとも思わなかったし、ましてや大学に残ってなにか研究するというつもりもない。

 「アンタ、『○○』って会社、知ってるか?」
 「『○○』? ○○コーポレーションか? そりゃあ、知ってるけど? 結構、有名じゃない? 大手の会社は実家から通える人しか採用しないんとちがうかな」
 「そうなんか。知り合いの人とな、アンタがいま都会に出て大学に通うとる、っちゅう話をしていたら、そのまま勤めに出るつもりがあるんなら就職の口利きでもしようか?…っていう話になってな」

 母がテレビを向いて話をしながらみかんをひと房ひと房口に運んでいる。

 「へえ、お母ちゃん、そんな知り合いの人がおるんか」
 「それでな、その『○○』とか、その…なんや、グループの会社っていうんか…そういう会社に顔が利く人が居てな? こっちさえよけりゃあ、口きいてくれる…っちゅうんやけどな」
 「えー? 『○○』に顔が利くなんて、お母ちゃん、その知り合いの人、そんなすごいんか?」
 「いや、あたしの知り合いってことはないんやけどな。まあ、知り合いの知り合いみたいなことでな…。○子が信金に入ったときも、それとなく世話してもろうたりしてな」
 「へえ。○子姉ちゃんも…。知らんかったわ」
 「もちろん○子は、高校でもそこそこええ成績も取ってたらしかったからよかったんやけどな。アンタ、成績はどうなんや? 素行不良で処分されたりはしとらんか?」
 「いややわ。素行不良なんて。中学生やないんよ、大学生なんよ」

 素行が優良かどうかはわからないけど、少なくとも『処分』はされていない。
 
 「そりゃあ、普通に勉強はしてるよ? 卒業に必要な単位はあとちょっとだけだし」
 「そうか。特に決まった就職のアテがないんやったら、その、知り合いの知り合いにでも話しておくから、申し込みとかなんとか…」
 「申し込み?…ああ、就職活動ね。そんなら、時期になったら、訪問でもしてみようか。でも『○○』なんて○子姉ちゃんには悪いけど、信金とは月とスッポンよ? ダメモトもええとこやよ?」
 「ああ、それでええ。ダメモトと思っていれば、あとは『うれしい誤算』でしかないからの」
 「△子姉ちゃんも就職の世話になったんか?」
 「まあ、そんな話も貰ってはいたんやが、あん子は蹴っ飛ばしてしまってなぁ」
 「へえ…。その知り合いの人、怒ったんじゃない?」
 「いやいや、たまたま成り行きでそうなってしまっただけでな。△子に悪気はなかったから、詫びに行ったら笑って済ませてくれたわ」
 「豪気な人なんやねぇ。まあ、でも、よくそんな知り合いがおったもんやねぇ」
 「まあ、そういう豪気な人の知り合いの人もまた豪気なんやろうな」
 「じゃあ、知り合いの知り合いの知り合い…あれ、さっきより知り合いが1つ増えたねぇ」
 
 そんな話をしながら二人でテレビの歌番組を眺めている。二人組の女性アイドルが激しい振り付けで歌を唄っている。

 「あんまり気にもしとらんかったが、よう見たらずいぶんハレンチな格好で唄うとるのぉ」
 「そう言われたらそうかもしれんねぇ」
 「衣装こさえて工場の新年会で唄うてみるかのぉ、ミサヨさん誘うて」
 「やめてぇな、恥ずかしい…」
 「はは、冗談や。年が明けたら、八幡さまに初詣に行こうか」


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