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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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就職活動-2

 「八幡さまに初詣か。実家に帰ってきた、って感じでいいね。お母ちゃんは、素行不良で処分でもされたことあるんか?」
 「あっはは。どうやろねえ。八幡さまにお尋ねしてみいや(笑)。そうそう、ミサヨさんとこの…ほれ、同級生の…」
 「ああ、真由美?」
 「そうそう。真由美が先月母親になったで」
 「えー、本当? 結婚したとは聞いてたけどなぁ」
 「なかなか赤ん坊ができんでおったんやけどな。八幡さまにお参りしたらすぐにコレよ」

 お母ちゃんがお腹の前で手を半円に描いて妊娠のサインを示す。

 「すぐに? それって、お参りしたときにはもう授かってたってことなんじゃないの?」
 「まあ、そう言いないな。ミサヨさんもたいそう喜んで、縫製工場のみんなで八幡さまの境内や社殿の掃除に行ったりしてな」
 「へえ、いいことしたんだねえ。縫製工場の人って言うと、あとは…ああ、ムツ子さんとかか? あん人、元気なんか?」
 「ああ、たいそう元気よ。さっきの知り合いの話も結局はムツ子さんとの伝手でな」
 「ムツ子さんならあちこち、いっぱい知り合いがおりそうやもんね」

 母より一回りくらい年上で、背丈も恰幅もある女性を思い浮かべる。

 「そや。アンタ、誰かええ人居たりはしないんか?」
 「『永久就職』の口はなにもないよ。ムツ子さんが紹介してくれるんか?」
 「まあ、焦って結婚を急ぐこともないわ。まずは、社会に出てそれからじっくり探したらええんやないか」
 「わたしもそのつもりだけどね」
 「それでええ。しかしまあ、ミサヨさんの喜びようを見てると、なんだか羨ましくてなあ。そや、八幡さまに、アタシが『おばあさん』になれるのはいつですか? ってお尋ねしてみよう(笑)」
 「○子姉ちゃんが、よろずやさんと一緒になってたら、もうそろそろおばあさんになっててもおかしくなかったんやろうけどなぁ。まさか、本家の会社が潰れてしまうとは思わなかったけどな」
 「○子がよろずやとくっつかずに済んだのも、八幡さまのおかげよ」
 「へえ。よろずやさんとは止めとき、ってお告げでもあったんか?」
 「まあ、そんなとこやな。とにもかくにも信心が大事ってことやわ…。それにしても、まあ見事な脚しよるなぁ」

 母が再びテレビ画面に見入っている。

 実家から帰って、大学の就職課の前の掲示板で、母が言っていた「○○コーポレーション」という会社の情報を探してみると、大学に対して「○○コーポレーション」がグループ企業も含めて『事務系職員若干名』の募集をしていることがわかった。就職課を訪れると『希望するなら書いてください』と係の人から書類を渡されたので、図書館に行ってあれこれ記入して就職課に託した。

 1カ月くらいたった頃、就職課から呼び出された。会社の採用担当から連絡があったので先方を訪ねてくれ、ということだった。わたしが了解すると、その場で電話をかけてくれ、指定された日時と場所に会社を訪ねることになった。

 数日後、「○○エンタープライズ東京支社」という事務所を訪ねて受付で用件を告げると、ロビーで待つように言われ、しばらくして50歳くらいの男が現れた。

 「△△女子大の◇◇さん? どうも。上田と言います」
 「はじめまして。本日はお時間を頂戴してありが…」
 「…ああ、固い挨拶はいいからいいから…。お茶でも飲みに行きましょう…」

 そう言って上田と名乗った男は玄関から外へ出ていこうとするので、慌てて後をついていく。向かいのビルの地下にある喫茶店に入る。

 「コーヒー、2つね」

 上田が注文を取りに来た店員に言うと、タバコに火をつける。志望動機を聞いてくるでもなく、ただこっちをじろじろ見ていてるばかりで少々薄気味悪い。母の伝手でこの会社を訪ねてみることにはなったが、もしやこの男が母の『知り合いの知り合い』に当たる人なのだろうか?

 「◇◇さんは◆◆のご出身なんですね。道理で◆◆美人でいらっしゃいますね。書類の字も綺麗だし。いいでしょ、いいでしょ。話、上に通しておきますから。5年、長くて10年も働けば、皆さん玉の輿に乗って寿退社されていきますよ。もちろん居心地を気に入って長く働かれる方もいます」
 「はぁ…」
 「○月になったら形ばかりの試験と面接やりますから、ちゃんと来てくださいね。念のために訊いておきますけど、本命がウチで、掛け持ちもしてない、ってことでいいんですよね?」

 掛け持ちもなにも、就職活動で会社を訪ねるのは今日が初めてだ。

 「はい…そう…ですね」
 「じゃあ、なんかあったら連絡しますから」

 上田はわたしに一枚名刺を渡すと、席を立って行ってしまった。店員がトレイにコーヒーを2つ乗せてやってきたが、特に不審がる様子もないまま、わたしの前に1つを置いて戻っていく。学生が訪ねて来るたびに、いつもこんな感じなのだろうか。わたしは、困惑しながらも、コーヒーをすすりアパートに戻った。


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